研究課題
本年度は、ヘモグロビンをリン脂質二重膜で内封したヘモグロビン小胞体 (HbV) に一酸化炭素 (CO) を付加したCO-HbVが国の特定難治性疾患の一つである特発性肺線維症 (IPF) 治療薬としての有用性評価を行い、以下の結果を得た。1. ICRマウスにBLM (5 mg/kg) を経気道投与し、BLM誘発IPFモデルマウスを作製した。BLM投与30分前及び1日後に、生理食塩水、HbVまたはCO-HbVを尾静脈投与し、各種病態関連パラメータを3群間で比較した。BLM投与14日目における肺組織中ヒドロキシプロリン量は、CO-HbV投与群でのみ有意に抑制され、線維化部位の特異的染色法であるMasson’s trichrome染色の結果からもCO-HbVによる肺線維化の抑制が支持された。さらに、肺機能(努力肺活量、肺組織の硬さ)を評価したところ、CO-HbV投与群でのみ肺機能の低下を有意に抑制していた。以上より、CO-HbVはBLM誘発の肺線維化を抑制することが示された。2. CO-HbV投与により気管支肺胞洗浄液中の白血球浸潤と肺組織中の炎症性サイトカイン産生量の有意な減少が認められた。また肺組織中酸化産物 (ニトロチロシン、8-OHdG)の免疫染色の結果より、CO-HbV投与により肺組織中の酸化産物の著明な減少が認められた。このことより、CO-HbVが抗炎症作用および抗酸化作用を発揮していることが示唆された。3. CO-HbV投与により、線維化因子の一つであるTGF-βの発現抑制が観察された。以上の結果より、CO-HbVはCOの抗炎症・抗酸化作用を発揮し、また、線維化の中心的な原因となるTGF-β産生を抑制することで、BLM誘発の肺線維化に対して優れた抑制効果を発揮することが明らかとなり、IPFの新規治療法になりうる可能性が強く示唆された。
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Biomaterials
10.1016/j.biomaterials.2014.04.049
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