研究課題/領域番号 |
24790160
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
門脇 大介 熊本大学, 薬学部, 准教授 (70433000)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 高尿酸血症 / ベンズブロマロン / 抗酸化作用 |
研究概要 |
高尿酸血症は痛風の原因となるばかりでなく、内皮障害や血管リモデリングを誘発することにより、高血圧や腎障害、心血管病変と関連することが見出されてきた。近年、これらの病態に共通する因子のひとつとして、活性酸素種 (ROS) が注目されている。そこで本年度は、高尿酸血症治療薬のうち、尿酸トランスポーター (URAT1) 阻害薬であるベンズブロマロンおよびキサンチンオキシダーゼ阻害薬であるアロプリノールのROSに対する影響をin vitro において検討した。 具体的には電子スピン共鳴(Electron spin resonance, ESR)を用いて、フリーラジカルを特異的に捕捉するDMPOを代表とするスピントラップ剤により評価を行った。その結果、xanthine/xanthine 系由来のスーパーオキシドアニオンラジカル (O2・‐) やhemoglobin/t-butyl hydroperoxide系由来の脂質ラジカルに対して直接的なスカベンジ作用を有することが確認された。一方、過酸化水素(H2O2)/UV照射系由来のヒドロキシルラジカル(OH・-)に対してはラジカル消去活性を有さなかった。ヒドロキシルラジカルは最も強力なラジカルの一つではあるが、その産生源はスーパーオキシドであるため,ベンズブロマロンはヒドロキシルラジカル産生に対してその出発点であるスーパーオキシドを消去するため,抗酸化剤としてのポテンシャルは高いことが示唆された。また、アロプリノールに関しては、キサンチンオキシダーゼ阻害によるラジカル産生抑制は有するが、直接的なラジカル消去活性は認められなかった。 これらの結果から,in vitroの検討ではあるものの、代表的な高尿酸血症治療薬の抗酸化剤としての相違について新たな知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、in vitroでの検討を実験系を複数用いて検証予定であったが,ESRにより非常に明瞭な結果が得られたため,現在,一段階進んで細胞系を用いた検討に取り掛かっている。そのため,当初予定していたin vitroの検討についてのデータの数は少ないものの,細胞系での検討に着手できているため,おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞のモデルとして汎用されているヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC),ヒト近位尿細管細胞(HK-2)およびヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)を用い,高尿酸血症治療薬の抗酸化作用を評価していく。細胞内で産生されたROSに特異的に反応する蛍光試薬であるCMH2-DCFDAの蛍光強度を測定することで,各種薬物添加による細胞内ROS産生の抑制効果を評価する。酸化ストレス誘発物質としては,尿酸,アンジオテンシンIIやH2O2,尿毒症物質などを計画している。この際,蛍光顕微鏡による細胞の形態変化や蛍光の局在についても観察する。さらに,細胞傷害性をWST-8やトリパンブルーによる生細胞計測により評価する。また,抗酸化作用により細胞傷害性が抑制された薬物については,炎症マーカー(IL-6,TNF-αなど)やアポトーシスマーカーの遺伝子及びタンパク質レベルでの発現変動について検討する。また,以前の研究結果から,高血圧治療薬であるアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が抗酸化作用を有する知見を得ていることから,これらARBと高尿酸血症治療薬の併用における抗酸化活性の評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,効率的に研究が遂行できたものの,機器のトラブルなど不測の状況も発生した。そのため,研究計画の軽微なずれなどが生じたため,来年度以降に持ち越した。しかしながら,来年度は細胞実験を重点とした研究計画のため,試薬など費用がかかるため少しでも多くの研究費確保のための補充と考えている。
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