研究課題/領域番号 |
24790161
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
佐藤 雄己 大分大学, 医学部, 薬剤主任 (00570087)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | がん化学療法による悪心・嘔吐 / 神経内分泌ペプチド / 制吐薬 / バイオマーカー |
研究概要 |
悪性腫瘍に対するがん化学療法時に高い頻度で発現する消化器症状,特に悪心,嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting: CINV)は治療を受ける患者にとって,大きな苦痛を感じる副作用のひとつであるが,症状の程度を反映する定量的な指標は現在まで明らかにされていない。CINVのバイオマーカーとなりうる候補物質としては,消化管の機能を司る神経内分泌ペプチドが挙げられる。本研究では,CINVと種々の神経内分泌ペプチドの血液中濃度変化との関連を明らかにし,バイオマーカーとしての有用性を検証することを目的とした。はじめに当院で化学療法が施行された患者95名においてCINVの発現状況について後向きに解析した。その結果,嘔吐の完全抑制率は90%以上と高かったが,悪心は30%以上,食欲不振は5%程度認められた。このことから,制吐薬が適正に使用されていても未だ悪心・食欲不振などの発現率は高いことが明らかとなった(学会報告)。次に,新規神経内分泌ペプチドとして,ghrelinおよびmid-regional adrenomedullin等の血液中濃度のEIA法による測定法を確立した。最後に,化学療法施行症例(2例)における各種神経内分泌ペプチド濃度を測定したところ,健常人に比較し,化学療法施行後ghrelin濃度が低値を示したが,他の神経内分泌ペプチド濃度に変化は認められず,また副作用発現との明らかな関連性は認められなかった。今後は化学療法施行後の神経内分泌ペプチド濃度と副作用発現との関連性について,患者の集積と神経内分泌ペプチド濃度の測定を進める予定である。また,CINVモデル動物を用いた基礎実験についても併行して行い,その結果を学会および論文等で公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.CINVの動物モデルを用いた採血方法・血液中神経内分泌濃度の測定方法の確立に時間を要したため。 2.CINV患者を対象とする試験プロトコール作成および倫理委員会への申請において時間を要したため。 3.患者の症例集積に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
試験対象症例の集積に時間を要しているため,他科への協力要請も考慮していく。また,CINVを発現した患者を対象として,申請者がこれまでのパイロット研究により薬効とCINVの病態と関連性の深い神経内分泌ペプチド変動との関連性を明らかにした消化器用薬の有無と投与前後の神経内分泌ペプチドの血液中濃度推移と症状の変化との比較を行う。さらに,患者の同意が得られれば、投与された各種消化器用薬の血中濃度をHPLC法により測定し,得られた値より薬物動態パラメーターを算出し,神経内分泌ペプチド濃度との関連性も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
EIAに使用する試薬・備品類については既存のものを使用したため今年度物品の購入は行わず,学会・講習会等で主として情報収集を行った。既存のものを引き続き試薬・備品類の購入に使用する。 ・ペプチド標品・抗血清類・EIAキット:100万円 ・EIA用マイクロプレート、イムノチューブ等備品:1万3千円 ・遺伝子解析用試薬:20万円 ・学会発表:7万円
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