研究課題/領域番号 |
24790164
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
岩城 壮一郎 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (60399962)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 動脈硬化症 / バイオマーカー / miRNA |
研究概要 |
バイオマーカーは生理的状態や病態の変動、治療への応答等と相関した血液や尿、組織等の生体試料から得られる客観的な指標である。近年、病態の診断や予防、治療への反応性や効果などを予測することを目的としたバイオマーカーの開発が注目されており、疾病の予防やオーダーメイド医療への応用が期待されている。動脈硬化性疾患の発症や再発を阻止するには、より早期の診断と治療開始が必要であるが、動脈硬化症発症の初期段階を診断可能なバイオマーカーはまだ実用化されていない。近年、細胞外に放出される分泌型microRNA (miRNA) が新たなバイオマーカー候補として期待されている。申請者はこれまでに、miRNAが動脈硬化症発症のマーカーとなり得る可能性に着目して検討を行い、動脈硬化症モデルマウスの病変部位において特異的に発現が変動するmiRNAの存在を見いだした。しかしながら、申請者が予備的な検討で得た大動脈組織由来のmiRNAは、直接臨床検査に応用することは侵襲性が高く現実的ではない。本研究ではより侵襲性が低く簡便に検体を得て診断ができるよう、分泌型miRNAに焦点を当てて解析を行った。申請者らは、miRNAが動脈硬化症発症のマーカーとなり得るかどうか検討するため、名古屋市立大学病院心臓・腎高血圧内科を受診した患者の血液よりより単離したmiRNAをマイクロアレイを用いて解析することで、動脈硬化発症の初期段階に特異的な分泌型miRNAの候補を得た。現在我々は、これらの得られたmiRNA候補のスクリーニングを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、名古屋市立大学病院心臓・腎高血圧内科の外来を受診した、古典的な心血管危険因子 (高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙) を有する無症候かつ無治療の患者 (重篤な肝疾患や腎障害、コントロール不良の糖尿病、内分泌疾患、悪性腫瘍の合併者は除外する) を対照に採血およびmiRNAの抽出を行い、マイクロアレイによりmiRNA発現の変動を検討することで、動脈硬化発症早期に特異的な発現変動を示すmiRNA群を得た。申請時には病態モデル動物を用いて研究を開始する予定であったが、実験当初から臨床検体を用いて解析を行ったため、効率的に研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、引き続き同定したmiRNA分子の機能解析を進めるとともに、新規な動脈硬化診断法の実現に向け、臨床検体を用いた解析を行う。リアルタイムPCR法でより微量の血液から効率よく分泌型miRNAを検出できるよう、miRNA抽出法および反応条件を検討する。miRNAはtotal RNAサンプル全体にわずか0.01%程度しか存在せず、検出には数ngのmiRNAを要するため、より微量の血液を測定するには検出感度の向上が必要である。本研究では、miRNAの抽出・精製法およびリアルタイムPCR法による反応条件を改良することで、最終的に全血100 μl以下から効率よくmiRNAの検出を可能にする。また、本申請課題で同定したmiRNA分子種を糖尿病や心血管疾患の既往歴を有する患者の血液より検出し、血管内皮機能との関連を検討することで新規な動脈硬化症の診断法としての可能性を探る。名古屋市立大学病院心臓・腎高血圧内科の外来を受診した患者 (重篤な肝疾患や腎障害、コントロール不良の糖尿病、内分泌疾患、悪性腫瘍の合併者は除外する) を対照にし、採血およびmiRNAの検出、ならびに血流依存性血管拡張反応検査 (FMD) を行い、本研究で同定したmiRNAの発現量と血管内皮障害との相関を検討し、新規な動脈硬化症の診断法としての可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本申請課題の申請時には病態モデル動物を用いた解析を行う予定であったが、研究の進捗により動物を使用する必要がなくなったため、動物の購入や飼育にかかる費用を削減することが出来、次年度へ繰り越すこととなった。当該助成金と合わせて平成25年度に使用する助成金の主要な用途は消耗品である。一般試薬や抗体等の分子生物学用試薬類、ディッシュやピペット等のプラスチック・ガラス器具類、培地や血清等の細胞培養試薬類、実験動物、ラジオアイソトープ試薬等の購入が必要である。また、学会で研究成果を発表するために必要な出張経費や論文発表の際の諸経費を計上した。
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