研究課題/領域番号 |
24790169
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
川野 雅章 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (30447528)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | simian virus 40 / polyomavirus / VP1 / vaccine / cytotoxic T lymphocyte / influenza A virus / herpes simplex virus / HIV |
研究概要 |
細胞傷害性T細胞 (cytotoxic T lymphocyte: CTL) は、体内のいかなる場所に居る標的細胞に対しても、見つけ出して攻撃し、死滅させることができる。この性質から、ウイルス抗原やがん抗原に対してCTLを誘導できるワクチンを開発することで、潜伏感染したウイルス感染細胞やがん細胞を体内から完全に除去することができると期待されている。そこで私は、どのような外来のCTL抗原、CTL epitopeに対してもアジュバントを加えること無く、in vivoで標的細胞を除去するのに十分なCTLを誘導することのできる、タンパク質型のプラットフォームを、ポリオーマウイルス科のSimian Virus 40のウイルス粒子外殻構成タンパク質であるVP1を利用して構築する研究を行った。研究計画で提案した、VP1を基にした7種類のプラットフォームの内、2種類において、導入した外来CTL抗原に対して強力にCTLを誘導することをin vivoで確認した。また、VP1プラットフォームによる強力なCTLを誘導するメカニズムを解明するため、in vitroにおいて、抗原提示細胞の活性化、および、抗原提示能を解析した。ヒトペルペスウイルス (HSV) は、潜伏感染することで、ウイルス粒子の産生を抑制するためのHSVに対する中和抗体によって、体内からHSV感染細胞を完全に除去することが難しいので、HSVに対するCTLによる治療が有用であると考えられる。そこで私は、HSVのCTL epitopeを導入したVP1プラットフォームの免疫により、HSV感染への治療効果があることを確認するために、まず、HSVに対するCTLエピトープはほとんど報告がないため、新規に強力にCTLを誘導することのできるHLA-A2および-A24に対するHSVの新規CTL epitopeを数十種類同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画初年度に予定していた、A型インフルエンザウイルスmatrix protein 1 (M1) 中のHLA-A2に対するCTL epitope (M1:58-66) を導入した2種類のプラットフォームにおいて、intra-cellular cytokine staining, 51Cr release assay, in vivo CTL assayを用いて、M1:58-66に特異的なCTLの誘導をin vivoで解析した。その結果、M1:58-66特異的なCD8陽性・IFN-γ陽性細胞群の誘導が確認され、この細胞群がM1:58-66に特異的にcytotoxicityを誘導すること、そのcytotoxicityによって、HLA-A2トランスジェニックマウス体内においてM1:58-66特異的に除去することが確認できた。また、研究計画2年度において予定していた、インフルエンザウイルス亜型感染に対する効能も、データとして蓄積することができた。よって、研究計画初年度で予定していた計画において概ね肯定的な結果を得ることができ、また研究計画2年度に予定していたウイルス感染に対する効能も肯定的な結果が出る糸口を見出すことができた。また、研究計画2年度で予定しているHSVに対する細胞傷害性T細胞誘導剤を構築するために、まず、HLA-A2および-A24に拘束性のあるHSVに対する反応性の良いCTL epitopeを見つけるためにスクリーニングを行った。その結果、intra-cellular cytokine stainingによって効率良くCD8陽性・IFN-γ陽性細胞群を誘導することのできるHSVのCTL epitopeを数十種類同定することができたので、研究計画2年度のHSV感染に対する効能を解析するためにVP1プラットフォームに導入するepitopeの候補を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
VP1をプラットフォームとした細胞傷害性T細胞誘導剤は、外来のCTL抗原、CTL epitopeに対しin vivoで非常に効率良くCTLを誘導することが明らかとなった。効率的にCTLを誘導するメカニズムを詳細に解明することは、次世代のより効率の良いCTL誘導プラットフォームの構築に必須であると考えられる。VP1プラットフォームの免疫によるCTLの誘導は、細胞にエンドサイトーシスで取り込まれたVP1プラットフォームが、プロテアソームで分解され、分解されたVP1プラットフォーム中に含まれていた外来のCTL epitopeがendoplasmic reticulumでMHC class Iと複合体を組んで、細胞表面に移送されてCTL epitopeが抗原提示されるというクロスプレゼンテーション経路を辿ると予想される。その過程で、抗原提示細胞においては、免疫の活性化が起きると考えられる。そこで、次年度では、VP1プラットフォームによる免疫活性化機構の解明、および、クロスプレゼンテーションを効率良く行う担当細胞を探索する。また、研究計画初年度で同定したHLA-A2および-A24拘束性のHSVに対する新規CTL epitopeがHSVに対するCD8陽性・IFN-γ陽性細胞群が、HSVに特異的なcytotoxicityを誘導すること、また、そのcytotoxicityがin vivoでHSV特異的に細胞を除去すること、その結果として、HSV感染に対して効能を有することを確認した後、VP1プラットフォームにそのepitopeを導入し、HSVに対するCTLワクチンとして機能することを示す。また、同様に、既知のHIVに対するCTL epitopeをVP1プラットフォームに導入し、このCTLワクチンがHIV感染に対する効能も有することを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
構築したM1特異的に細胞傷害性T細胞を誘導する2種類のVP1プラットフォームのintracellular cytokine staining, 51Cr release assay, in vivo CTL assay, virus challengeの結果をまとめ、in vitroで抗原提示細胞の活性化、および、クロスプレゼンテーションの効率を解析するための試薬代、および、残り5種類のVP1プラットフォームの構築のための試薬代に使用する。また、HSVに対する新規CTL epitopeの効能を示すための解析に使用する試薬代、HSV, HIVに対するCTL epitopeを導入したVP1プラットフォームの構築、および、効能を示すための解析に使用する試薬代に使用する。また、結果を国内・国外で発表するための旅費代、論文として公表するための投稿費用として用いる。
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