研究課題
細胞傷害性T細胞 (cytotoxic T lymphocyte: CTL) は、ウイルスに感染した細胞や、がん細胞などの正常に機能しなくなった細胞を見つけ出して、攻撃し、死滅させる役割を持つ。この性質を利用して、ワクチン接種によって免疫機構に病原体情報を伝達することで、我々の目的とする抗原に対してCTLを誘導し、抗原を発現している細胞を特異的に破壊しようとする試みが行われている。この方法によって、抗体や薬剤では困難であった、潜伏感染性のウイルスや、がん細胞を体内から除去することが可能になると期待されている。しかしながら、現段階では、目的の細胞を除去するのに十分なCTLをワクチン接種によって誘導することが非常に困難である。そこで我々は、ポリオーマウイルス科のsimian virus 40 (SV40) の粒子外殻を構成するタンパク質、VP1を基本骨格とするワクチンプラットフォームを構築し、効能を証明するために、インフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質に対するCTLエピトープをこのプラットフォームに挿入することで細胞傷害性T細胞誘導剤を構築した。マウスを用いた実験から、この細胞傷害性T細胞誘導剤で免疫すると期待通り、マトリックスタンパク質に対してCTLが、古典的な免疫賦活剤と比較して、非常に効率的に誘導されることが明らかとなり、その結果、インフルエンザウイルス感染における肺でのウイルス増殖が優位に抑制されることが示された (Virology, 2014, 448: 159-167)。SV40 VP1が細胞傷害性T細胞誘導剤の基本骨格として有効であることが示されたことから、VP1の有する細胞傷害性T細胞誘導剤としての機能解明と、更なる詳細な有効性の評価が待望される。
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Virology
巻: 448 ページ: 159-167
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埼玉医科大学雑誌
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