研究課題/領域番号 |
24790173
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 葉子(遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バブルリポソーム / miRNA / 虚血性疾患 |
研究概要 |
これまでに、カチオン性脂質を用いた超音波造影ガス封入リポソーム(バブルリポソーム)を開発し、その表面に遺伝子を搭載可能なDDSキャリアー、および超音波造影剤としての有用性を示してきた。本研究においては、miRNA搭載型バブル製剤を開発し、虚血性脳血管障害治療への応用を目的としている。 本年度は、3種のカチオン性脂質(DSTAP・DSDAP・DDAB)を含有したバブルリポソームを調製し、虚血部位へのデリバリーツールとしての有用性について、レポーター遺伝子を用いて比較検討した。動物モデルは、モデル作製法、遺伝子導入法を既に確立している下肢虚血モデルマウスを用いた。その結果、3種のうちDSDAP含有バブルリポソームにおいて最も高い導入効果が得られた。DSDAP含有バブルリポソームによる下肢虚血部位へのbFGF遺伝子導入により、血管新生因子のmRNAレベルの上昇、および血流改善も認められ、虚血性疾患治療におけるDDSキャリアーとしての有用性が示唆された。 さらに、DSDAP含有バブルリポソームに対し、pDNAの搭載と同様の方法でmiRNAの搭載を試みたところ、DSDAPによる搭載率の上昇が認められなかった。そこで、調製溶媒を変更して検討したところ、HBG bufferを用いることで、バブルリポソームのゼータ電位が上昇し、miRNA搭載率の向上が認められた。また、溶媒の変更による傷害性および超音波造影効果の変化はなかった。 バブルリポソームと超音波照射の併用により、HUVECへのmiR-126の導入を試みた結果、未処理群、コントロールmiRNA導入群と比較し、細胞内miR-126レベルの有意な上昇、およびVEGFシグナルの活性化が認められた。これらの結果より、バブルリポソームのmiRNAキャリアーとしての有用性、およびmiR-126導入による虚血性疾患治療の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カチオン性脂質を用いた遺伝子搭載型バブルリポソームと超音波照射の併用により、虚血部位への血管内投与を介した遺伝子デリバリー効果を示すことに成功した。下肢虚血モデルでの検討ではあるが、血流が制限されている部位へのデリバリー効果を示すことは、本研究において重要な点である。さらに、低分子核酸であるmiRNAのキャリアーとしての最適化を行い、脳への標的指向性を有するバブル製剤を開発するうえで、基本となる組成が定まった。また、miR-126の細胞内導入により、血管新生関連シグナルに影響を与え得ることを示し、虚血性疾患治療への有用性が示唆された。初年度に計画していた検討項目のうち、脳梗塞モデルの構築が済んでいないものの、その他の検討項目に関しては上述の通り進んでおり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
miRNA搭載型バブルリポソームの調製が可能となり、またmiR-126の細胞内導入により、血管新生関連シグナルに影響を与え得ることが示されたので、下肢虚血モデルマウスへのmiR-126搭載バブルリポソームの投与による虚血性疾患治療効果について検討を行う。それと並行して、本研究の対象疾患である脳梗塞モデルの構築を進める。 脳組織への超音波核酸デリバリー法は、まだ確立されていない。これまでに有用性が確認されたpDNAあるいはmiRNA搭載型バブルリポソームを正常マウスに静脈内投与し、脳組織への超音波照射の併用による遺伝子・核酸導入を試みる。その際、LuciferaseおよびGFPなどのレポーター遺伝子や、蛍光標識miRNAを搭載させることで、Luciferase活性の測定、さらにin vivoイメージング、あるいは組織切片の顕微鏡観察により、遺伝子や核酸の脳組織への導入効果を評価する。これらの結果、および組織への傷害性を指標に、ナノバブルの投与量、および超音波照射条件の検討を行う。その条件を基に、脳梗塞モデル動物に対する核酸デリバリー効果・治療効果を評価し、条件の最適化を行う。 ナノバブルに標的指向性を付与するため、ペプチドの修飾を試みる。初めに、蛍光標識を施したペプチド修飾リポソームを調製し、in vitroおよびin vivoにおいて脳へのデリバリー効果を指標に、ペプチドの種類、修飾率の検討を行う。高い集積性をもつリポソームが調製可能となった後、超音波造影ガスの封入によるバブル化を試み、その造影効果、miRNAの搭載、脳組織への核酸デリバリー効果について評価する。 上述の検討を2年間で順序立てて進めることで、本研究の目的である低分子核酸搭載ナノバブルと超音波照射併用による低侵襲的な虚血性脳血管障害治療への応用を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度未使用による次年度使用額が一部あるものの、7,156円と少額であり、おおむね当初の計画通りに使用している。平成25年度請求額と合わせ、脳梗塞モデル構築のための各種実験器具・試薬、ペプチド修飾リポソーム調製のための数種のペプチド・脂質、合成miRNA、動物、解析用の各種試薬など、主に物品購入に使用する予定である。
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