研究課題/領域番号 |
24790173
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 葉子 (遠藤 葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
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キーワード | バブルリポソーム / miRNA / 虚血性疾患 |
研究概要 |
当該年度は、前年度までに最適化したmiRNA搭載バブルリポソームを用い、モデル作製法・遺伝子導入法を既に確立している下肢虚血モデルマウスに対する治療効果について検討を行った。治療用miRNAとして、前年度までに血管内皮細胞を用いて血管新生シグナルを活性化することを確認したmiR-126を用いた。はじめに、miRNA搭載バブルリポソームをモデルマウス尾静脈より投与し、診断用超音波を下肢虚血部位へ照射したところ、血流が著しく低下している部位ではあるが、微細な毛細血管を介して疾患部位へバブルリポソームが到達可能であることが超音波イメージングにより確認された。次に、miR-126搭載バブルリポソームと治療用超音波を用いてmiRNA導入後、経時的に血流測定を行った。さらに、疾患部位筋組織を回収し、リアルタイムPCRにより各種血管新生因子への影響について検討を行った。その結果、miR-126搭載バブルリポソームを投与した群において、コントロールmiRNA搭載バブルリポソーム投与群、およびmiR-126とカチオン性脂質非含有バブルリポソームの混合溶液投与群と比較して、各種血管新生因子の有意な上昇と血流改善効果が認められた。これらの結果は、動物モデルを用いた治療効果の報告がほとんどなかったmiR-126の核酸治療薬としての有用性のみならず、本研究において目的とするmiRNA搭載バブルリポソームによる虚血性疾患治療の有用性を示唆するものであり、本研究において重要な成果であるといえる。 さらに、脳への標的指向性を有するペプチドを用い、ペプチド修飾リポソームの調製と基礎的評価に着手した。まだ最適化が必要なものの、脳血管内皮細胞との相互作用が認められるリポソームの調製に成功した。最適化を進めつつ造影ガスの封入を試みることで、脳へ標的指向性を有するペプチド修飾ナノバブルの開発に繋がる有用な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カチオン性脂質を用いたmiRNA搭載型バブルリポソームと超音波照射の併用により、血管内投与を介した虚血部位へのmiRNAデリバリーとその治療効果を示すことに成功した。本研究の目的とする脳血管障害ではなく、下肢虚血モデルでの検討結果ではあるものの、平成25年度に計画していた実施項目の一つであり、全身投与を介した虚血部位へのmiRNAのデリバリー効果、さらには、これまでに動物モデルを用いた治療効果の報告のほとんどなかったmiR-126を用い、虚血性疾患治療薬としての有用性を示したことは、脳を標的組織とした研究を進めるうえでも非常に重要な点である。 ペプチド修飾ナノバブル製剤の開発を進めるにあたり、その第一段階として、造影ガス未封入のペプチド修飾リポソームの開発に着手した。脳組織への標的指向性が報告されている2種のペプチドを用い、それぞれ修飾法、修飾率を脳血管内皮細胞との相互作用を指標に評価した。コントロールペプチドとの比較実験や阻害実験などは今後の検討課題ではあるが、脳血管内皮細胞との相互作用を有するペプチド修飾リポソームの調製に成功した。 また脳梗塞モデルの構築と並行し、正常マウスを用いた脳組織での超音波遺伝子導入の検討にも着手している。今後、低分子核酸の導入実験を進めるにあたり、この条件検討は非常に有益な情報になり得るものと考えている。 当初計画していた検討項目のうち、脳梗塞モデルの構築、および脳組織への核酸デリバリー法の確立が若干遅れてはいるものの、いずれも着手しており、またその他の検討項目に関しては上述の通り進んでいることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチド修飾リポソームの調製に成功したことから、コントロールペプチドとの比較検討、および阻害実験などにより、その標的特異性の評価を更に進める。またin vivoにおける脳組織への移行性についても、in vivoイメージング、あるいは組織切片の顕微鏡観察により評価する。さらに、超音波造影ガスの封入によるバブル化を試み、その超音波造影効果についてin vitroおよびin vivoにおいて評価する。また、バブル化することで粒子径などの物性が変化することから、脳血管内皮細胞との相互作用、in vivoにおける脳組織への集積性をin vivoイメージング、あるいは組織切片の顕微鏡観察により評価し、ペプチド修飾量などの最適化を行う。また、カチオン性脂質含有によるmiRNAの搭載についても併せて検討を進める予定である。 下肢虚血モデルマウスへのmiR-126搭載バブルリポソームの投与による虚血性疾患治療効果が示されたので、本研究の対象疾患である脳梗塞モデルの構築を進め、脳梗塞モデルにおけるmiR-126導入効果について検討を行う。その前段階として、LuciferaseあるいはGFPなどをコードしたpDNA、または蛍光標識miRNAを搭載させたバブルリポソームを用い、脳組織への超音波照射の併用による遺伝子・核酸導入を試み、遺伝子や核酸の脳組織への導入効果を評価する。これらの結果、および組織への傷害性を指標に、ナノバブルの投与量、および超音波照射条件の検討を行う。その条件を基に、脳梗塞モデル動物に対する核酸デリバリー効果・治療効果を評価し、条件の最適化を行う。 上述の検討を順序立てて進めることで、本研究の目的である低分子核酸搭載ナノバブルと超音波照射併用による低侵襲的な虚血性脳血管障害治療への応用を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
ペプチド修飾リポソームの開発に時間を要したことから、in vitroでの検討が多く、脳組織へのデリバリーに関するin vivo実験は一部進まなかった。それにより、ペプチドや脂質、合成miRNAの使用量が、当初予定していたよりも少なかったため、未使用額が生じたと考えられる。 平成25年度未使用による次年度使用額が一部あるものの、おおむね当初の計画通りに使用している。最終年度ということもあり、これまでと比較しin vivoにおける検討も増えるため、実験動物代のみならず、ペプチド修飾バブルリポソーム調製のための数種のペプチド・脂質、合成miRNA、解析用の各種試薬などの支出も増加すると予想されることから、平成26年度請求額と合わせ、主に物品購入に使用する予定である。
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