研究課題/領域番号 |
24790173
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 葉子(遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バブルリポソーム / Angiopep-2 / 脳 |
研究実績の概要 |
脳組織へ標的指向性を有するペプチド修飾ナノバブルを新たに調製し、脳組織への効率的な核酸導入法とそれに伴う脳血管障害治療システムの開発を目指す。 血液脳関門(BBB)に対する特異性を有するAngiopep-2ペプチドを用い、ペプチド修飾リポソームの調製とその基礎的評価を行った。脳血管内皮細胞との相互作用を指標に、調製法や脂質組成、ペプチド修飾率などの最適化を進めた。その結果、未修飾リポソームやコントロールペプチドであるAngiopep-7修飾リポソームと比較して、脳血管内皮細胞への特異性を有するリポソームの調製に成功した。次に、Angiopep-2修飾リポソームに超音波造影ガスを封入したAngiopep-2修飾ナノバブルの調製を試み、その物性を評価した。粒子径やゼータ電位については、ペプチド修飾有無による顕著な差異は認められなかった。また、超音波造影効果についても検討したところ、ペプチド未修飾のナノバブルと同様に、Angiopep-2修飾ナノバブルは造影能を有することが確認された。さらに、Angiopep-2修飾ナノバブルと脳血管内皮細胞との相互作用は、未修飾ナノバブルやAngiopep-7修飾ナノバブルと比較して増大し、抗LRP-1抗体の前処理によりコントロールレベルまで減弱することが明らかとなった。これらのことより、Angiopep-2修飾ナノバブルが特異的にLRP-1を介して脳血管内皮細胞に相互作用することが示唆された。また、調製したAngiopep-2修飾ナノバブルを正常マウス尾静脈より投与したところ、未修飾ナノバブルやAngiopep-7修飾ナノバブルと比較して脳組織への集積性が高いことが示された。これらの結果は、本研究において目的とする脳血管障害治療システムの有用なツールとなり得ることを示唆する重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Angiopep-2修飾ナノバブルの調製に成功し、その造影効果や脳組織への集積性を確認することができた。これは本研究の目的である脳への標的指向性を有する核酸搭載ナノバブルの開発の基盤技術となる有用な成果である。 また、正常マウスを用いた脳組織への遺伝子導入の基礎的検討にも着手している。超音波照射条件やナノバブルの投与量などの種々の条件検討は、低分子核酸の導入実験を進めるにあたり、非常に有益な情報になり得る。 核酸を搭載させた状態での安定性・標的指向性などの評価、およびその最適化については時間を要しており、脳梗塞モデルにおける検討と併せて次年度に進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
Angiopep-2ペプチドを用いることで、脳組織への特異性を有するペプチド修飾ナノバブルの開発に成功した。現在、カチオン性脂質DSDAPを含有させることで、遺伝子や核酸の搭載を試みている。その際、安定性や標的指向性などの物性に変化が認められているため、血管内皮細胞との相互作用、およびin vivoにおける脳組織への集積性を指標に、適宜組成の変更を試み、本研究に最適なナノバブルの調製を目指す。また、脳梗塞などの虚血病変部位ではLRP-1の発現が増大するとの報告もあることから、モデル動物を用いた検討に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ペプチド修飾ナノバブルの開発に時間を要したことから、in vitroでの検討が多く、脳組織へのデリバリーに関するin vivo実験は一部進まず、消耗品の使用額が当初の予定より少なかった。また休職に伴う研究期間の延長を申請したため、研究費を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
正常マウスに対する遺伝子・核酸導入効果、また疾患モデルマウスに対する治療効果の検討など、これまでと比較しin vivoにおける検討も増えるため、実験動物代のみならず、ペプチド修飾ナノバブル調製のためのペプチド・脂質、合成miRNA、解析用の各種試薬などの支出も増加すると予想されることから、主に消耗品の購入に使用する予定である。
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