研究課題/領域番号 |
24790183
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
多田 稔 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 主任研究官 (50506954)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗体医薬品 / TNFα |
研究概要 |
平成24年度は当初の研究計画に従って、既承認の抗TNFα抗体医薬品について、①抗原エピトープ解析および②膜結合型TNFα結合親和性解析を実施した。 ①抗原エピトープ解析: TNFα(全長233アミノ酸)について、ペプチド長15アミノ酸×72ペプチド(オーバーラップ13アミノ酸)からなるペプチドアレイを作成し、4つの抗TNFα抗体医薬品(Infliximab、Adalimumab、Golimumab、Etanercept)が結合するペプチドを解析した結果、何れの抗体医薬品についても共通に結合するペプチドが検出された一方で、各々の抗体に特異的に結合するペプチド(抗原エピトープ)は認められなかった。これらの抗TNFα抗体医薬品はTNFαの立体構造(コンフォメーショナルエピトープ)を認識する可能性が考えられた。 ②膜結合型TNFα結合親和性解析:標的細胞としてプロテアーゼ切断部位を改変した膜結合型TNFαを安定発現するJurkat細胞株を樹立し、抗TNFα抗体医薬品の結合親和性を解析した。また次年度に予定しているADCC活性の評価に先立って、膜結合型TNFαとの結合に依存したFcγ受容体活性化能について検討を行った。 InfliximabはAdalimumabと比較して、可溶性TNFαに対して強い結合親和性を示すが、膜結合型TNFαに対する結合親和性は同程度であった。一方、膜結合型TNFαとの結合に依存したFcγ受容体活性化能は、Adalimumabに比べてInfliximabで有意に高く、Infliximabは膜結合型TNFαを発現する標的細胞に対してより強い細胞傷害活性を発揮する可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は既承認の抗TNFα抗体医薬品の抗原-抗体複合体形成能の差異に着目し、膜結合型TNFαを標的とした細胞傷害活性およびリバースシグナル伝達に及ぼす影響を解析することにより、抗TNFα抗体医薬品の薬効発現メカニズムを明らかにすることを目的としている。初年度である平成24年度は、抗原エピトープ解析については予定していた実験結果が得られなかったものの、本研究の主な目的である膜結合型TNFαを標的とした薬効発現メカニズムの解析については、当初予定していた標的細胞株の樹立、結合親和性解析に加えて、次年度以降に予定していた細胞傷害活性の比較ならびにリバースシグナル伝達の評価系の構築が進行しており、全体としては概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
複合体形成能の差異が抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)およびリバースシグナル伝達に及ぼす影響の検討を行う。 ①ADCC活性の測定:前年度に作製した膜結合型TNFα発現細胞を標的細胞として、ヒト末梢血単核球細胞をエフェクター細胞として使用する。標的細胞の細胞死を指標に抗TNFα抗体医薬品のADCC活性を評価する。 ②リバースシグナル伝達:同様に膜結合型TNFα発現細胞を標的とし、標的細胞の細胞周期停止およびアポトーシス誘導を活性の指標とする。抗体医薬品のアゴニスト活性を増強する要因として報告されている抗体の固相化条件等を検討し、各々の抗TNFα抗体医薬品のシグナル伝達能について明らかにする。 これらと前年度の結果を総合して、抗TNFα抗体医薬品の膜結合型TNFαに対する親和性および複合体形成能と、膜結合型TNFαを標的とした際の生物活性の相関を明らかにする。 さらに詳細が未解明であるリバースシグナル伝達について介在する細胞内シグナル伝達経路を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に繰り越した研究費は、消耗品費(細胞培養用試薬等)として使用する。
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