抗TNFα抗体医薬品の抗原-抗体複合体形成能の差異が生物活性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として以下の研究を実施した。 1.可溶性TNFαとの複合体形成能及びFcγ受容体活性化能:抗体医薬品インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ及びTNFR-Fc融合タンパク質エタネルセプトを試料とし、動的光散乱法を用いて可溶性TNFαとの複合体形成能を評価した。エタネルセプトと比較して3つの抗体医薬品は巨大な抗原-抗体複合体を形成すること、複合体形成能はインフリキシマブ>ゴリムマブ>アダリムマブの順に強いことが明らかとなった。独自に開発したレポーター細胞(Jurkat/FcγR/NFAT-Luc)を用いた解析の結果、可溶性TNFα存在下において複合体形成能の高いインフリキシマブではアダリムマブに比べてより強いFcγ受容体の活性化を誘導することが明らかとなった。 2.膜結合型TNFα結合親和性:標的細胞としてプロテアーゼ切断部位を改変した膜結合型TNFαを安定発現するJurkat細胞株を樹立し、抗TNFα抗体医薬品の結合親和性を解析した。インフリキシマブはアダリムマブと比べて可溶性TNFαに対する結合親和性が高いことが報告されている一方で、膜結合型TNFαに対する結合親和性はアダリムマブと同程度であることが明らかとなった。 3.膜結合型TNFα発現細胞に対するADCC活性:膜結合型TNFα安定発現細胞およびレポーター細胞(Jurkat/FcγR/NFAT-Luc)を抗体医薬品存在下で共培養し抗原結合に依存したFcγ受容体の活性化を評価した。インフリキシマブはアダリムマブに比べてより強いFcγ受容体活性化能を示すことが明らかとなり、抗原認識部位の違いによる複合体形成能の差異が膜結合型TNFα発現細胞に対するエフェクター細胞の活性化、すなわちADCC活性の発揮に関与することが示唆された。
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