研究課題
抗EGFR抗体薬の効果予測はKRASの遺伝子変異検査で行われているが、適応となっても20~30%程度の奏功率である。これは、KRAS遺伝子変異以外のメカニズムでも抗EGFR抗体薬の耐性化が生じることによる。KRAS遺伝子変異を含め、多くの場合、抗EGFR抗体薬の耐性化メカニズムは、最終的に、EGFRシグナル関連キナーゼの恒常的活性化を誘導することにある。そこで、本研究では、キナーゼ活性の包括的解析で、抗EGFR抗体薬の効果を予測できるのかどうかを検討した。大腸癌細胞株を抗EGFR抗体薬(セツキシマブ)感受性株、耐性株に分類し、それらを、40種類以上の活性型キナーゼ抗体を用いたウエスタンブロット法で解析した。その結果、耐性株ではMek1/2の活性が著しく高く、感受性株ではPDPK1の活性化とSrcの不活性化が観察された。Mek1/2の活性化は特に、BRAF E600V遺伝子変異を持つ耐性株で顕著であった。これらの結果は、キナーゼ活性を包括的に測定することが、抗EGFR抗体薬の効果予測に有効である可能性を示した。現在、キナーゼ活性をLC-MS/MSで包括的に測定する技術の開発を進めている。さらに、本研究では、抗EGFR抗体薬の作用メカニズムの一端を明らかにした。正常の細胞は細胞間接着が刺激となり、細胞増殖が停止する。一方、がん細胞ではその細胞増殖抑制機構が破綻している。抗EGFR抗体薬の処理によって、がん細胞の接着阻止機能が、破綻状態から回復することを見出した。上記メカニズムを分子レベルで明らかにするためのプロテオーム解析を行い、いくつかの関連因子候補を見出した。接着阻止関連因子が抗EGFR抗体薬の効果予測バイオマーカーになる可能性があると考えている。
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