研究課題/領域番号 |
24790185
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮崎 太輔 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90374230)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プルキンエ細胞 / 登上線維 / ルガロ細胞 / バスケット細胞 |
研究概要 |
【概要】登上線維-小脳プルキンエ細胞投射系では細胞体での線維間競合を経て、単一の優勢線維による樹状突起支配が確立する。細胞体では登上線維シナプスの除去が進行する一方で、バスケット細胞による抑制性独占的支配が形成されるが、両者の機能的な因果関係については未だ不明である。本研究では中枢神経回路における「特定の細胞内ドメインで起こる興奮性入力と抑制性入力による競合」の存在を実験的に証明するために、発達期プルキンエ細胞体での抑制性ニューロンの機能阻害下における登上線維シナプス除去過程の解析を行う。 【平成24年度の実績】レンチウイルスやGFP発現モデルマウスを用いた抑制性介在ニューロンの可視化し、神経標識法を用いて登上線維の可視化を行った。これらの手法を用いた発達期小脳の観察を通じ、以下の所見を得た。 ①発達期プルキンエ細胞体において、登上線維終末の排除とバスケット細胞由来の抑制性終末の増加が相補的に起こっていることを定量的に示した。②発達期小脳ではプルキンエ細胞体とルガロ細胞が密接している様子が観察され、この傾向は発達が進むにつれて減少していった。③発達期小脳で一過性に見られるプルキンエ細胞-ルガロ細胞密着領域では登上線維終末が高頻度に観察された。 以上の所見は、プルキンエ細胞体における登上線維終末の排除が、バスケット細胞、ルガロ細胞といった抑制性介在ニューロンの分化と密接に関わっていることを示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究内容は幼若期プルキンエ細胞体における登上線維排除過程の機構解明を目的として、以下の解析項目に大別される。 I.プルキンエ細胞体におけるバスケット細胞の抑制性入力形成過程と登上線維除去過程の形態学的相関性を明らかにする。 II.プルキンエ細胞体直下で見られるプルキンエ細胞反回側枝-登上線維複合体構造を電顕レベルで解析し、ルガロ細胞発達過程との相関性を明らかにする。 III. 抑制性ニューロンの機能阻害モデルを作成し、抑制性ニューロンの発達不全が登上線維除去に与える影響を明らかにする。 平成24年度ではこれらの研究項目の内、IとIIが予定通りほぼ終了しているため、本研究計画は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究内容は幼若期プルキンエ細胞体における登上線維排除過程の機構解明を目的とする。平成25年度は予定解析項目の、III. 抑制性ニューロンの機能阻害モデルを作成とその解析を行う。具体的には群馬大・柳川教授から供与をうけたGAD67loxマウスにレンチウイルスを介したcreリコンビナーゼ導入を行い、登上線維シナプス除去における単一介在ニューロンの機能解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度では、22,798円の未使用額が発生した。これは平成24年度末に購入した物品の支払いが、平成24年4月に支払われることになったため生じたものである。平成25年5月現在では、平成24年度未使用額はない。
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