研究課題/領域番号 |
24790186
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 恵 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90613787)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | パイエル板 / M細胞 |
研究概要 |
小腸パイエル板は管腔内の抗原を取り込みIgA産生を制御することで粘膜免疫応答の調節を行う。その過程には濾胞被蓋上皮層のM細胞が重要な役割を担う。M細胞の分化と成熟は通常の腸管上皮細胞とは異なり、上皮下の細胞との相互作用が重要であると言われているが、その実態は不明である。申請者らのこれまでの研究から、膜突起構造の形成に関わる分子であるM-SecがM細胞に発現していることが明らかになっている。この構造が細胞間相互作用を仲介する新規の構造であることに注目し、本研究計画ではM-Secの機能を解析することで、M細胞分化における細胞間相互作用機構を分子レベルで解明することを目的とした。 パイエル板におけるM細胞の形態をM細胞特異的分子Gp2とM-Sec抗体を用いて観察したところ、M細胞の基底膜側には膜突起が存在し、基底膜を通過していることを明らかにした。パイエル板上皮下の間質系細胞はM細胞分化を制御するRANKLを発現している。その受容体であるRANKは腸管上皮細胞の側基底面に発現している。M細胞の場合はさらに基底膜突起上にもRANKの発現が認められ、RANKを発現する間質系細胞と接していることを明らかにした。しかしながらM-Secノックアウトマウスでもこの突起形成は正常であり、M細胞分化にも大きな変化は認められなかった。 RANK-RANKLシグナルがM細胞分化に十分であることはすでに知られている。しかしながら、その制御機構は明らかになっていない。受容体RANKはパイエル板上皮全体に発現しているがM細胞になるのはそのうちの一部である。基底膜下の間質系細胞と接する膜突起構造の発見は、この構造を介して直接RANK-RANKLシグナルを受け取ることがM細胞分化に重要であることを示唆している。これは上皮と間質系細胞との新たな相互作用機構の可能性がある。今後、突起形成の分子機構を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫組織化学染色、免疫電子顕微鏡観察など複数の方法によってM細胞基底面の膜突起を確認できた。さらに膜突起に受容体RANKの存在、膜突起がRANKLを発現する間質系細胞に接していることを明らかにすることができた。さらに、M細胞で特異的に発現する2つの分子M-SecとGp2の発現分布を我々が開発したホールマウント染色法で解析したところ、蛍光ビーズの取込み能を持つ成熟したM細胞はGp2とM-Secを両方発現するが、Gp2を発現せずM-Secだけを発現するM細胞は取込み能が低く、未成熟なM細胞であることを明らかにしている。これらは研究計画どおりに進め、予想通りの成果を挙げることができた。 一方で、強制発現によって培養細胞に膜突起形成を誘導するM-Secは、M細胞特異的に発現しているが、ノックアウトマウスではM細胞の膜突起形成、M細胞分化は一見正常であった。今後、M-SecとM細胞膜突起形成の関係を明らかにしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
M細胞の膜突起で実際にRANK-RANKLの相互作用が起きているかを明らかにする。まず、膜突起における受容体RANKの局在を免疫電子顕微鏡観察に用いて、RANKLを発現する間質系細胞と接している部分を詳細に観察する。RANKL抗体を投与することでM細胞分化は抑制される、この時膜突起形成に変化が起きているかを明らかにすることで、膜突起形成と維持にRANK-RANKLの相互作用が関与しているかを明らかにすることを目指す。 基底膜への膜突起の形状はマクロファージや癌細胞などに見られる浸潤突起によく似ている。浸潤突起形成に間夜するWASPなどの分子の局在を調べることで突起形成の分子機構を明らかにする。 M-Secノックアウトマウスの解析を続け、M細胞分化や膜突起に異常が起きていないかを詳しく観察する。M-Secと相互作用する分子を明らかにし、M-Secノックアウトマウスにおける相互作用分子の挙動の変化を調べる。BrdU取込み実験、蛍光ビーズの取込み実験を行いM細胞の代謝、機能に変化が起きていないかを明らかにすることでM細胞におけるM-Secの機能解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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