研究課題
マウスの大脳皮質の一次体性感覚野の第4層には、顔面に生える太いヒゲ(洞毛)のそれぞれからの情報を処理するバレル(樽構造)と呼ばれるモジュール構造が存在し、1つのバレルには1本のヒゲからの情報が視床経由で伝えられる。このバレル構造は生後1週目に受動的なヒゲ刺激に伴う神経活動依存的に形成される。しかしながら、バレル神経回路内の興奮・抑制のバランスがどのようにバレル形成や臨界期可塑性の時間特性や振幅に影響を与えるかは未だ不明である。本研究では興奮性および抑制性ニューロンそれぞれに選択的なNMDA受容体の欠損による機能・形態変化の解析を通じ、興奮・抑制バランス依存的なバレル神経回路形成制御機構を明らかにすることを目的とする。平成24年度には以下のような2つの重要な所見を得た。1)相補的なNMDA受容体発現;発達期および成熟動物のバレル神経回路におけるNMDA型のグルタミン酸受容体の発現解析を行ない、抑制性の介在ニューロンのうち、パルブアルブミン陽性ニューロンにはNR2Dが選択的に発現しているが、NR2Bサブユニットは興奮性の細胞に多く発現しているという相補的な関係が存在している。2)NR2B+/-マウスとNR2D-/-マウスではバレル形成と可塑性の時間的特性が逆方向にずれている;幼若マウスのバレル皮質の解析を行ったところ、バレルの出現はNR2B+/-マウスで一日遅れ、NR2D-/-マウスでは逆に一日早まっている。また臨界期終了時期も同様である。以上の所見は今後の研究を進めていく上で鍵となる重要な所見であり、この現象の背景にある仕組みを理解できるようにデータを固めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画である1)バレル皮質の形成と臨界期可塑性に生じる変化については解析が終了し、2)バレル皮質内の局所回路に生じる形態変化についても順調に解析が進んでいる。
2年度目になる平成25年度は、平成24年度の上記の研究成果を更に進展させる。2)バレル皮質内の局所回路に生じる形態変化についてはさらに詳細な電顕レベルでの解析を行い、バレル皮質内の伝達に生じる変化についてパッチクランプ法を用いた電気生理学的解析を進める予定である。
平成24年度末(平成25年3月)に購入した物品の支払いが、平成25年4月であるために未使用額が発生した。
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