研究課題/領域番号 |
24790190
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
上野 仁之 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30586251)
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キーワード | オートファジー / 筋形成・再生 / LC3 |
研究概要 |
前年の結果より筋芽細胞から筋管細胞への分化のときにオートファジーが活性化することが分かった。そこでさらに詳しく調べるために、筋芽細胞株C2C12を用いてオートファジーの阻害剤である3-メチルアデニンを添加して筋管細胞への分化の影響を調べた。C2C12細胞は4日目から筋管細胞を形成を始めることが知られていることから、まず1-3日目まで3-メチルアデニンを添加したもの、4-6日目まで3-メチルアデニンを添加したもの、何も添加をしないもので比較した。3-メチルアデニンを添加したものではいずれも筋管細胞への分化が阻害されていた。さらに詳しく調べるために、分化後1-6日それぞれで3-メチルアデニンを加えてそれぞれ分化の違いを比較した。1-6日目いずれの時に3-メチルアデニンを添加したときも分化が阻害されることが分かった。このことによりオートファジーは筋芽細胞から筋管細胞への分化にいずれの段階でも重要であることが示唆された。 次にオートファジーの促進剤であるラパマイシンを用い、筋管細胞への分化の影響を調べた。まず1-3日目までラパマイシンを添加したもの、4-6日目までラパマイシンを添加したもの、何も添加をしないもので比較した。ラパマイシンを添加したものではいずれも筋管細胞への分化が阻害されていた。さらに詳しく調べるために、分化後1-6日それぞれでラパマイシンを加えてそれぞれ分化の違いを比較した。1-6日目いずれの時にラパマイシンを添加したときも分化が阻害されることが分かった。 これらの実験により、オートファジーを阻害しても促進しても筋芽細胞から筋管細胞への分化がうまくできないことから、筋の分化過程においてオートファジーは厳密に制御されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、分担しているノックアウトを使った研究のまとめ時期にありそちらに大きく時間をとられている。しかし電子顕微鏡の技術習得など、これから当研究に必須な手法の習得なども行った。またC2C12の筋管細胞の形成時に核の周囲にオートファゴソームが蓄積することが電顕レベルで分かっており、これからの研究の道しるべになると考えている。 また小胞体ストレスをかけると筋管細胞の分化が促進されるとされていたが、当研究室では再現が出来なかった。その代替になる高分化能をもつC2C12細胞の単離方法を新たに発見した。大腸菌用のペトリディッシュで培養することで高分化能を有するC2C12細胞を容易に分離できることが分かった。これにより特殊な試薬や培養をせずに高分化能のC2C12を簡便に得られる。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋形成・再生時におけるオートファゴソームを観察する:筋の形成・発生における未成熟なマウス胎仔、及び成体マウスの障害後の筋を採取する。筋発生では、中胚葉由来の大切から筋芽細胞が出現する。出生時の骨格筋には中心核を持つ未熟な骨格筋細胞が多く存在する。筋再生では成体の骨格筋をカルジオトキシンで傷害すると、誘導される。傷害後、約1ヶ月の間に筋衛星細胞の活性化から骨格筋成熟までを観察できる。上記のような骨格筋形成・再生過程における未成熟な骨格筋でオートファゴソームのマーカーであるLC3の発現と分布を明らかにする。 培養筋芽細胞内でのLC3の局在と活性を視覚的に観察する:培養筋芽細胞は分化の際、決して一様とは言えず、さまざまな分化のステージにある細胞の混合培養になっている。このためウエスタンブロットでは骨格筋形成におけるオートファジーの活性時期を正確に調べることはできない。オートファゴソームはライソゾームと融合し、オートライソゾームとなると内部のpHが極端に酸性になるためGFPやFITCなどが蛍光を発することができなくなる。この性質を使い、LC3にGFPとRFPをつけたベクターを培養筋芽細胞に導入することによりオートファゴソームとオートライソゾームが定量的にライブで観察できる。さらには筋芽細胞の分化段階を特定するために、筋芽細胞のマーカーで転写因子(Pax3、myogenin、MyoD)や筋に特異的な細胞骨格関連分子(desmin、myosin,alphaactinin,actinなど)の観察もする。これにより骨格筋形成におけるオートファジーの活性時期をより詳細かつ定量的に調べることができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生した理由は、当該年度に予定していたマウスを使った実験が研究全体の遅れによって実行されなかったためである。 次年度使用額に関しては当該年度に行われなかったマウスを使った実験に使用する。またそれに加えすでに実行されると計画されていた実験についてはそのまま行う。
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