まず骨格筋損傷時にオートファジーが活性化しているかどうかを調べた。カルジオトキシン(CTX)は骨格筋の細胞膜を破壊することが知られている。これを前脛骨筋に注入して1-4週目の修復過程におけるオートファジーの動態を抗LC3及びp63を用いて観察した。まず、注入前の筋では特にLC3の集積、p63の発現増加などはほとんど観察されなかった。次にCTX注入後の再生初期に当たる1-2週目において損傷を受け再生途中の中心核になっている筋にLC3が細胞質全体に強く染色され、さらに核の周りにきわめて強いドット状のシグナルを観察することが出来た。また、p63に関しては中心核になっている骨格筋がすべて強く染色される訳ではなく、中心核になっている骨格筋の中のごく一部だけが強く染色されることが分かった。また、再生後期に当たる3-4週目においてはLC3とp63の動態はCTX注入前と特に変化は見られなかった。このことにより骨格筋の損傷によりオートファジーが活性化され、再生初期において筋修復に必要である事が示唆された。 次に筋分化過程におけるオートファジーの活性を見るために筋分化モデルとして筋線維芽細胞株C2C12を用い、GFP及びRFPのついたLC3を遺伝子導入した。RFPはライソゾームなどpHの低い場所では蛍光を発さないことからオートファゴソームがライソソームと融合しているかを調べることが出来る。分化前の観察では特にオートファゴソームのような小胞状のLC3は観察されず細胞質全体にGFP-RFP-LC3が存在していた。分化開始1-3日ではLC3は核近傍に小胞状にオートファゴソームとして集まって存在していた。分化開始5-7日では筋管細胞も筋管細胞になっていない細胞もLC3の多くがオートファゴソームに存在しており、少しオートリソソームにも観察できた。いずれも核近傍に集まっていた。
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