研究課題
前年度までの成果をもとに、内臓逆位および嚢胞性腎疾患に関連する遺伝子産物Inv/NPHP2 に存在するカルシウム結合部位である IQ ドメインが Inv/NPHP2 蛋白局在制御およびゼブラフィッシュ個体での腎嚢胞形成に関与することを英文論文にまとめた(4月現在、未投稿)。IQ ドメインはカルモジュリン(CaM)が結合するドメインであり、繊毛/細胞内カルシウム濃度が Inv/NPHP2局在を制御している可能性が強く示唆され、多発性嚢胞腎発症に深くかかわるPKD1/2遺伝子産物であるpkd1/2カルシウムイオンチャネル下流シグナル分子として Inv/NPHP2が細胞内へのカルシウムイオン流入後に繊毛各部位に移行し、結合パートナーを変え、繊毛の複雑なシグナル経路に関与している可能性が想定される点で、細胞生物学的に興味深い成果である。特に、PKDとNPHP疾患は尿細管拡張という良く似た表現型を示すが、これら経路の連絡点は明らかにされておらず、細胞内カルシウムイオン濃度の点からそのつながりを示唆した点で、病態学的にも重要な成果と言える。さらに、この成果をさらに発展させるために、繊毛センサーとして機能している内耳の球形嚢・卵形嚢に着目し、マウスからこの組織を顕微鏡下解剖で取得する系の構築を行った。文献検索から脱灰後の切片化・マイクロダイセクションが有効であると思われたが、実解剖の結果、顕微鏡下で直接上皮組織を取り出す方法を選択することとした。採取量はごく微量であるが、DNA解析等には用いることができると期待される。今後、この技術をさらに発展させ、繊毛内でのセンサー分子としてInvと相互作用する因子の同定につなげることが期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Arterioscler Thromb Vasc Biol.
巻: 34(1) ページ: 110-119
10.1161/ATVBAHA.113.302107
生物工学会誌
巻: 第92巻1号 ページ: 44