研究課題
下垂体前葉の5種類の内分泌細胞は特異的な親和性で接着し、加えて非ホルモン産生性の濾胞星状細胞がそれらを取り囲む。濾胞星状細胞は前葉内における局所環境の調節のために特に重要であると考えられている。申請者は近年開発された濾胞星状細胞で特異的にGFPを産生するトランスジェニックラットを使用し、濾胞星状細胞の産生する物質の全容を明らかにすることに成功した。この成果を基に、本研究は濾胞星状細胞で特異的に産生される分泌因子を確定し、その機能を明らかにすることで、下垂体前葉内での新たな細胞機能調節機構を解明することを目指した。これまでの研究で、トランスクリプトーム解析によりラット下垂体前葉の濾胞星状細胞で特異的に発現する遺伝子を明らかにしてきた。本年度においては、その発現遺伝子プロファイルの中から高発現する分泌因子に注目し、in situ hybridization法、免疫組織化学による組織化学的解析による分泌因子の産生細胞の同定を行った。新規ヘパリン結合性成長因子であるmidkineとpleiotrophinの特異的cRNAプローブを用いたin situ hybridizationにより、それら成長因子は成体ラット下垂体の前葉と後葉で発現していることが明らかとなった。さらに、各種ホルモン抗体との二重免疫染色法により、両因子は非ホルモン産生性で、S100タンパク陽性細胞の一部で発現していることが明らかとなった。また、受容体であるPtprzはホルモン産生細胞で発現していることも分かった。本研究は、成体ラット下垂体前葉において濾胞星状細胞がmidkineとpleiotrophinを産生することを初めて明らかにし、下垂体前葉内で両因子はホルモン産生細胞の機能調節に何らかの働きを持つことを示唆する結果を得た。
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