研究課題/領域番号 |
24790204
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
大谷 佐知(桑原佐知) 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (40412001)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 下垂体 / アクアポリン / 濾胞星状細胞 / LPS |
研究概要 |
アクアポリン(AQP)は水輸送に関与する膜蛋白である。本研究は下垂体の生理的ならびに病態変化から下垂体に発現するAQPの機能的役割を解明し、水輸送機構の実在とその経路を証明することを目的として以下の実験を行った。 リポポリサッカライド(LPS)の腹腔内投与により全身性炎症モデルラットを作成し、下垂体前葉の濾胞星状細胞(FS細胞)に発現するAQP4の動態を経時的に追跡した。前葉組織におけるAQP4 mRNAの発現量をリアルタイムPCR法にて定量した結果、LPS投与後2時間から8時間まで有意な増加を示した。発現量はその後減少し、24時間後にはコントロール群と同等の値になった。次に下垂体組織においてAQP4抗体を用いて免疫染色を行ったところ、FS細胞における免疫陽性反応はLPS投与により増加し、8時間後に最も強い反応が認められた。mRNAの発現量の変化と同様、陽性反応はその後減少し、24時間後の組織像はコントロール群と差がみられなかった。またLPS投与8時間後の前葉組織にはcyst様構造が観察され、それらはAQP4陽性細胞により構成されていた。 以上の結果から、LPS投与により下垂体前葉においてFS細胞におけるAQP4の発現が増強し、cyst様構造が形成されることが明らかになった。またAQP4の発現量やcyst様構造の形成には経時的変化がみられたことから、AQP4は下垂体組織の炎症変化の発生や進行、治癒過程に関与し、前葉内の恒常性の維持に関与する可能性が示唆された。 さらにより詳細にAQP4の役割を検討するために、現在、前葉の初代培養系を用いた実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は大きく分けて2つの実験を計画していた。1つ目『下垂体浮腫モデルラットを用いた実験』については計画通りに遂行し、実験を完了した。得られた研究成果は学術雑誌に投稿し、受理され掲載が決まっている。一方、申請者は平成24年5月より約半年間、産休・育休を取得して実験を一時中断した。そのため2つ目『培養系を用いた浸透圧実験』については実験の立ち上げを完了したところで本年度は終了し、年度内に十分な成果は得られなかった。計画通りに進められなかったことは十分に反省すべき点である。しかしながら復帰後は速やかに実験を再開し研究を進めているため本実験の成果については25年度内に得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度に残った課題を含めて研究を進めていく必要がある。したがって実験については極力重複を避け、同時進行で進めていく。実験手法についてはほとんどが24年度に既に確立しているものを用いるため、実験自体はスムーズにおこなうことができると考えている。また25年度は最終年度であるため、研究の総まとめを重点とし、さらには新しい課題への着手を目標に研究を進めるつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年5月より約半年間、産休・育休を取得し、実験を一時中断したため、平成24年度に実際に使用した研究経費は予定に比べ大幅に少なかった。しかしながら今後実験をすすめていくにあたって、申請した2年間の研究経費は必須であり、平成25年度内に使用する予定をしている。申請書に記載した通り、研究経費の主体は消耗品であり、具体的な使用予定は以下の通りである。 試薬類100万円、器具類35万円、実験動物40万円、受託合成20万円、国内旅費7万円、論文投稿料10万円。
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