アクアポリン(AQP)は水輸送に関与する膜蛋白である。前年度の研究により、リポポリサッカライド(LPS)を腹腔内に投与した全身性炎症モデルラットにおいて、下垂体前葉の濾胞星状細胞(FS細胞)に発現するAQP4が増強することが明らかになった。発現のピークはLPS投与後8時間であり、24時間後にはコントロール群と同等に戻った。この研究結果をもとに今年度は培養実験により、下垂体前葉におけるAQP4の発現について検討を行った。まず、FS細胞様株であるTtT/GF細胞において、AQP4の発現を確認したところ、発現量がマウス下垂体前葉における発現に比べると非常に少ないことが分かった。浸透圧変化による影響を検討するために、培地にマンニトールを添加してTtT/GF細胞の培養をおこなったが、AQP4の発現量に顕著な変化はみられなかった。LPSによる影響を検討するために、LPSを添加して培養をおこなったが、同様の結果であった。また下垂体前葉の初代培養系においても同様の実験をおこなったが、両実験によりAQP4に明らかな変化はみられなかった。このことより、下垂体前葉におけるAQP4の発現には、足場となるアンカーリングタンパクなどの発現が必要である可能性が示唆された。次にLPS投与ラットの下垂体前葉組織についてより詳細に検討するために、電子顕微鏡にて観察をおこなった。LPS投与ラットにおいて細胞間隙の拡張は前葉組織全体にみられたが、cyst様構造の周辺がより顕著であった。cyst様構造を構成するFS細胞は、コントロール群でみられたFS細胞よりも扁平のものが多く、多数の微絨毛が観察された。
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