研究課題
ヒトATP13A4を哺乳類由来細胞株に過剰発現させると、核近傍に凝集し核貪食性細胞死(ヌクレオファジー)を誘導することを見出した。本研究は、ATP13A4の関与する新しい細胞死の仕組みを分子レベルで解明することを目的とした。本年度は主に以下の成果を得た。1、マウスATP13A4は、ヒトATP13A4とは異なり主に原形質膜に局在しヌクレオファジーを誘導しない。しかし、マウスATP13A4のN末領域(493アミノ酸配列)をヒトATP13A4の配列に変えたキメラ体は、ヒトATP13A4と同様に核近傍に凝集し、ヌクレオファジーを誘導した。2、マウスおよびヒトATP13A4において、Na+/K+依存性のATP加水分解活性を測定したところ、マウスATP13A4過剰発現細胞では有意な活性上昇が見られたのに対し、ヒトATP13A4過剰発現細胞の活性は、空ベクター導入細胞と有意な差は見られず、ATP13A4のイオン輸送機能は種間で異なっていた。また、イオン輸送過程の高エネルギーリン酸化中間体形成に重要なアスパラギン酸残基をグルタミン酸に変異させたヒトATP13A4(D486E)変異体過剰発現細胞においても、ヌクレオファジーの誘導が見られた。3、ヒトATP13A4と共役しヌクレオファジー誘導に関与する分子を同定するために、核および核近傍の凝集体サンプルを用いて網羅的プロテオミクス解析を行った。ヒトATP13A4過剰発現細胞において、ユビキチンプロテアソーム系タンパク質および種々のタンパク質分解酵素の発現が顕著に増加していた。以上より、ヒトATP13A4は、マウスとは異なりイオン輸送機能を持たず、N末領域の関与する機能がヌクレオファジー誘導に関与しているものと考えられた。また、ヒトATP13A4によるヌクレオファジー誘導メカニズムに、タンパク質分解系の異常な亢進が関与している可能性が示唆された。
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