研究課題/領域番号 |
24790210
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
柏原 俊英 信州大学, 医学部, 助教 (20552334)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | L型カルシウムチャネル / 心筋 / T管 / プロテインホスファターゼ2A / カゼインキナーゼ2 |
研究概要 |
申請者らは最近、心不全で心室筋細胞の興奮修復連関の要であるT管のL型カルシウムチャネル(LTCC)の基礎活性がプロテインホスファターゼ(PP)2Aの過剰な作用により半減していることを見出した。このことは、心筋のLTCCの基礎活性が、病態に応じてリン酸化・脱リン酸化によりダイナミックに調節されていることを意味する。さらにごく最近心筋細胞で、異種4量体(α2β2,αα’β2, α’2β2)であるカゼインキナーゼ(CK)2がLTCCの基礎活性を調節していることを見出した。本研究は、これらの知見に、最近報告されたLTCC遠位C末端(DCT)によるCaV1.2 LTCCの活性化制御に関する知見を加えて、心不全におけるT管のLTCC活性の異常を、CK2とPP2Aの作用のアンバランスで説明しようとするものである。本研究ではまず、異所性の発現系(tsA201細胞)に心筋でみられるようなDCTで自己抑制されたLTCCを発現させ、その基礎活性を修飾するCK2のサブユニット構成と分子機構を調べた。その結果、①CK2αではなくα’とβのノックダウンがLTCCの基礎活性を半減させること、②α2β2やαα’β2ではなくα’2β2型のCK2の強制発現がLTCCを強く活性化することを初めて見出した。これより、α’2β2型CK2はDCTによるLTCCの自己抑制を解除することでLTCCの基礎活性を制御することが示された。本研究により、心不全の背景にある分子機構が明らかとなれば、心臓分子生理学の進展に寄与できると考えられ、また新たな心不全治療法開発の手がかりもつかめるのではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画における、CK2がDCTにより自己抑制されたCav1.2 LTCCに与える効果の解析については、以下に示す通りおおむね順調に解析を終えることができたため。 Western blot法でtsA201細胞におけるCK2の各サブユニットの発現を確認した結果、α・α’・βサブユニットの発現が認められた。CK2の選択的阻害薬キナリザリンはリコンビナントLTCCの基礎活性を有意に抑制した。TsA201細胞にCK2α・α’・βサブユニットの発現が認められたため、siRNAでそれぞれのサブユニットをノックダウンさせた結果、α’とβのノックダウンはリコンビナントLTCCの基礎活性を半減させた。しかし、αのノックダウンはそれを抑制しなかった。これより、tsA201細胞においてCK2α’とβはリコンビナントLTCCの基礎活性を制御することが示唆された。次に、CK2のα・α’・βサブユニットを種々の組合せでtsA201細胞に強制発現させた結果、α’はリコンビナントLTCCの基礎活性を僅かに有意に増加したが、α’+βはそれをより強くほぼ最大限に増加した。しかし、α、β、α+βの強制発現はそれを有意に増加しなかった。これより、CK2α’β複合体はリコンビナントLTCCを最大限に活性化することができる可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、まず、PP2AがCK2により活性化されたLTCCに与える効果について解析する。具体的には、TsA201細胞で、PP2Aの阻害薬、またPP2Aの過剰発現やsiRNAが、LTCC電流に与える効果をパッチクランプ法で解析する。同時にWestern blot法で、Thr1704のリン酸化状態を定量化し、比較検討する。次に、正常および心不全マウスの心室筋のT管のLTCCのThr1704のリン酸化をWestern blot法で解析する。またこの検討を、CK2、PP2A阻害薬の存在下でも行う。また、平成24年度の研究で、tsA201細胞においてα’β型CK2がLTCCの基礎活性を制御することが示されたため、このことを心筋細胞を用いて検証したい。そこで、新たにマウス心筋細胞株HL-1細胞を用いた実験を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画については、基本的には研究計画書に示した内容で進めていく予定であるが、実験の進行状況により一部内容を変更したものがある。実験に使用する抗体の業者への作成依頼については、実験の進行状況により平成25年度に変更する予定である。前年度未使用額については、当初計画時よりも備品を安価で購入できたものがあるため、次年度使用額が生じた。
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