研究課題
心室筋細胞の興奮修復連関の要であるT管のL型カルシウムチャネル(LTCC)の基礎活性は、病態に応じてリン酸化・脱リン酸化によりダイナミックに調節されている。最近我々は心筋細胞で、異種4量体(α2β2,αα’β2, α’2β2)であるカゼインキナーゼ(CK)2がLTCCの基礎活性を調節していることを見出した。本研究は、CK2によるLTCCの基礎活性制御の分子機構を明らかにしようとするものである。本研究ではまず、tsA201細胞に心筋でみられるような自己抑制されたLTCCを発現させ、その基礎活性を修飾するCK2のサブユニット構成と分子機構を調べた。その結果、①CK2αではなくα’とβのノックダウンがリコンビウナントLTCCの基礎活性を半減させること②α2β2やαα’β2ではなくα’2β2型のCK2の強制発現がLTCCを強く活性化させること③Cav1.2 LTCCのThr1704のAla置換体では、α’2β2型のCK2の強制発現によるLTCCの活性化は消失することを見出した。次ぎにtsA201細胞で明らかにしたα’2β2型CK2によるLTCC制御機構が心筋で機能しているかどうか、マウス心筋細胞株HL-1を用いて確認した。④HL-1細胞のCK2α’のノックダウンは心筋でCK2α’を活性化することが知られているアンジオテンシンIIによるLTCCの活性化を有意に抑制した。これよりα’2β2型CK2は心筋のLTCCの活性を制御することが示唆された。本研究より、心筋のLTCCの基礎活性を担うキナーゼの一つがα’2β2型CK2であることが分かった。心不全ではT管のLTCCの基礎活性が低下し心機能が低下している可能性が考えられるため、α’2β2型CK2を活性化するような方法は新たな心不全治療法になることが期待できる。
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