研究課題
前年度までに、SHARPIN欠損細胞とHOIL-1L欠損細胞では同程度にNF-κBの活性化が減弱することがわかっていた。また、TNF-α依存的な細胞死はSHARPIN欠損細胞でのみ大きく亢進することが明らかとなっていた。今年度では、SHARPINのみを過剰発現する細胞とHOIL-1Lのみを過剰発現する細胞を作成し、NF-κB活性化とTNF-α刺激依存的な細胞死を比較した。その結果、NF-κB活性化はどちらの細胞でも野生型細胞と同程度にまで回復したが、TNF-α依存的な細胞死はSHARPINのみを過剰発現する細胞でだけ抑制されることがわかった。興味深いことに、HOIL-1Lのみを過剰発現する細胞は正常なNF-κB活性化を示すにも関わらず、細胞死の程度は過剰発現前とほとんど変わりがなかった。以上のことから、SHARPINのみがTNF-α刺激依存的な細胞死を抑制することがはっきりした。次に、SHARPINがアポトーシスを抑制するメカニズムを調べたところ、SHARPIN欠損細胞ではTNF-α刺激後にRIP1がアポトーシス誘導複合体に早くかつ多くリクルートされることがわかった。これまでの報告から、RIP1はTNF受容体中で直鎖状ポリユビキチン化されることがわかっている。RIP1はユビキチン化されないとTNF受容体から外れてアポトーシス誘導複合体に組み込まれ、細胞にアポトーシスを誘導する。これらのことから、SHARPINはRIP1の直鎖状ユビキチン化に関与することで細胞死を抑制しているのだと考えられる。
すべて 2013
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EMBO J
巻: 32 ページ: 2463