研究課題
本研究は、細胞がネクローシスで死ぬかアポトーシスで死ぬかを制御する因子の探索とその機能解析を行い、細胞死の決定機構を明らかにすることを目的として実施した。我々は抗がん剤5-fluoro-2'-deoxyuridine (FUdR)を作用させるとネクローシスを起す哺乳動物細胞FM3A細胞F28-7株とその変異株でアポトーシスを起すF28-7-A株を細胞死の解析モデルとして研究を行い、これまでに細胞死を決定づける因子として核膜構造タンパク質Lamin-B1、細胞骨格タンパク質Cytokeratin-19、分子シャペロンHsp90、転写因子ATF3(Activating transcription factor 3)を見出している。平成25年度は以下の研究成果を得た。(1) 平成24年度までの研究から見出している細胞死制御因子Lamin-B1、Cytokeratin-19、Hsp90、ATF3について、各因子間の関連性を調べた。各細胞死制御因子をそれぞれsiRNAでノックダウンしても他の因子の発現量に影響はなかった。また、分子シャペロンHsp90とLamin-B1、Cytokeratin-19、ATF3との直接的なタンパク質-タンパク質相互作用は見られなかった。(2) これまでの研究から見出しているネクローシスを起す細胞とアポトーシスを起す細胞で発現量の異なるmicroRNA(miRNA)について、miRNA mimic及びmiRNA inhibitorを用いて細胞死の表現系に与える影響を調べた。その結果、アポトーシスを起す細胞で多く発現しているmiRNAを、本来FUdR作用によりネクローシスを起す細胞に過剰発現させると、その細胞死がアポトーシスに変化することを明らかにした。(3) 細胞のネクローシスとアポトーシスを決定づけるmiRNAについて、Lamin-B1、Cytokeratin-19、ATF3の発現における役割を調べた。ネクローシスを起す細胞に、このmiRNAを過剰発現させると、タンパク質レベルでLamin-B1が減少することを明らかにした。Cytokeratin-19及びATF3の発現は、このmiRNAを過剰発現しても影響を受けないことが明らかになった。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
FEBS Journal
巻: 281 ページ: 1892-1900
10.1111/febs.12752
PLOS ONE
巻: 8 ページ: e72519
10.1371/journal.pone.0072519