研究課題/領域番号 |
24790221
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 有作 自治医科大学, 医学部, 助教 (60528420)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 求心性迷走神経 / 摂食 / 延髄孤束核 / nodose ganglion / 細胞内Ca |
研究概要 |
求心性迷走神経は末梢臓器と脳を繋ぐ内臓感覚神経である。本研究では、求心性迷走神経に作用して摂食量を調節する末梢因子を同定し、その際の迷走神経から延髄孤束核への神経伝達機構を明らかにすることである。 H24年度は、下垂体後葉ホルモンであるオキシトシン(OXT)の末梢投与が、直接迷走神経求心路をを活性化し、摂食量を抑制することを明らかにした。マウスへの末梢OXT投与は、摂食量を減少させ、求心性迷走神経の投射先である延髄孤束核(NTS)にでのc-fosタンパク質(神経活性化マーカー)の発現量を増加させた。これらOXTによる作用は、横隔膜下迷走神経切断によって完全にキャンセルされた。OXTは求心性迷走神経であるnodose ganglion neuron (NGN)に直接作用し、単離培養したNGNの細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)を上昇させた。OXTによる[Ca2+]i上昇はオキシトシン受容体阻害剤によって抑制された。さらに、OXTに応答するNGNの90%以上が求心性迷走神経を介して満腹感を誘導することで知られるコレシストキニン(CCK)によって活性化され、約80%が神経伝達物質のCART (コカイン・アンフェタミン調節転写産物)ペプチドを含有していた。これら結果より、末梢OXTはCARTペプチドを含有し、CCKにも応答する求心性迷走神経を、オキシトシン受容体を介して活性化し、その神経情報はNTSに伝達され、最終的に摂食量を低下させることを明らかにした。 これまで申請者が明らかにした満腹を誘導する迷走神経作用物質は、OXTが作用する神経とオーバーラップする。よって、H25年度は、このOXTの摂食抑制経路を「遺伝子発現解析」と「生理・行動解析」を組み合わせて解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初H24年度計画は、求心性迷走神経内の神経伝達物質の変動をDNAマクロアレー等を用いて解析をし、摂食を調節する神経伝達物質をスクリーニングする予定であった。一方で、求心性迷走神経に強力に作用し、満腹感を誘導する分子(オキシトシン)を発見し、こちらの研究を大きく伸展させた。オキシトシンは限局した迷走神経に作用して強力に摂食量を抑制させることから、求心性迷走神経から脳(延髄孤束核)へ満腹シグナルを伝達する神経伝達物質の探索・解析に非常に有用なツール化合物になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)迷走神経に作用する摂食調節性末梢因子を探索し、その応答する神経細胞のその他因子への応答性から特徴を解析する。 2)満腹時、空腹時のマウスのNodose ganglionに発現しているmRNA量を、DNAマイクロアレーにて解析し、その発現量の変化から摂食調節に関与している神経伝達物質を探索する。マイクロアレー結果を定量的PCR法にて再解析する。 3)第4脳室もしくは延髄孤束核へ神経伝達物質を投与し摂食量の変化を解析する。 4)摂食調節性末梢因子投与後の摂食量変化に対して、候補神経団津物質の受容体阻害剤や中和抗体を第4脳室/延髄孤束核へ投与の効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な実験動物、各種試薬・消耗器機等を購入する。DNAマイクロアレー解析を外部業者に委託依頼する。本研究に関連する学会への参加・研究成果報告のための参加費・旅費を計上する。さらに、論文投稿費、英文校閲費、本実験関連資料費をその他として計上する。
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