研究課題/領域番号 |
24790222
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
安岡 有紀子 北里大学, 医学部, 助教 (50348504)
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キーワード | V1aR / V2R / AQP2 / アシドーシス |
研究概要 |
本年度は、アシドーシス時にAQP2の管腔膜移行が阻害される機構におけるV1aRシグナルの関与を調べるために、実験的に代謝性アシドーシスを誘発し、水電解調節分子の発現変化をV1aR KOとWTで比較した。 代謝性アシドーシスは、KO、WTマウスに2.5% NH4Cl食を6日間負荷することにより誘導し、血液・尿成分を比較し、AQP2はwestern blotting法により発現量を定量し、免疫染色法により細胞内局在を調べ、V1aR、V2Rは高感度in situ hybridization法により発現量を解析した。 アシドーシス誘発時におけるWTのV1aR mRNAの発現量は、MTALとOMCD(IC-A)においてのみ、有意に増加した(P < 0.05)。血漿[AVP](pg/ml)は、アシドーシス誘導によりWT、KO共に増加せず有意差はなかった(WT: 304.4±58.5 (0 d), 293.6±52.9 (6 d)、KO: 443.6±46.5 (0 d), 479.6±41 (6 d))。尿中AVP排泄量(pg/d)も同様の傾向を示した(WT: 417.2±51.9 (0 d), 531.6±84.2 (6 d)、KO: 645.3±117.7 (0 d), 970.1±252.8 (6 d))。アシドーシス誘導時、WTのAQP2、V2R発現量は増加したが、AQP2は細胞質内に限局した。KOマウスでは、AQP2、V2Rの発現量が著しく低下し、AQP2は管腔膜に局在した。 AVP-V1aR (IC)を介したシグナルは、V2R (PC)の発現/活性化とAQP2の管腔膜から細胞質への移行に影響し、代謝性アシドーシス時の尿濃縮能低下をもたらすと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、1. アシドーシス時にV1aRの発現量が変化する細胞の同定、2. V1aR KOの水電解質調節分子の解析、3. アシドーシス時のV1aR KOの血漿、尿成分、水電解質調節関連分子の解析を計画した。 1. アシドーシス時にV1aRの発現量が変化する細胞の同定:アシドーシスを誘導する条件は、0.28M NH4Cl / 2% sucroseをマウスに飲水させる方法が最も多く使われている方法であるが、アシドーシスを誘導すると同時に血漿浸透圧を上昇させ血漿AVP濃度の上昇も引き起こす。血漿AVP濃度を上昇させないでアシドーシスを誘導させるため、NH4Clを飲水させるのではなく、餌に混ぜることにより(2.5% NH4Cl)、条件を確立した。アシドーシス誘導後、WTマウスの腎V1aR mRNA発現量を尿細管の部位別、細胞別にISH法により定量し、髄質部TALとOMCDの間在細胞typeAで増加していることを明らかにした。(達成度100%) 2. V1aR KOの水電解質調節分子の解析:アシドーシス誘導時の水電解質調節分子AQP2、V2Rを解析した。AQP2, V2R発現量は、KOにおいて有意に低下していたが、AQP2の管腔膜移行はWTよりも多いことを明らかにした。(達成度100%) 3. アシドーシス時のV1aR KOの血漿、尿成分、水電解質調節関連分子の解析:WTとKOのアシドーシス誘導時の血漿pH、HCO3-、pCO2、電解質濃度、AVP濃度を調べ、比較した。プロスタグランジン量の比較、AQP2の発現量を制御すると考えられているインスリン、TNFα、CREB、AP-1の発現量の比較は平成26年度に行う予定である。(達成度60%)
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今後の研究の推進方策 |
集合管におけるV1aRシグナルの解明するために、V1aR KOマウス、集合管主細胞の培養細胞を用いて解析を行う。 ・アシドーシス時・脱水時のV1aR KOの血漿、尿成分の解析:プロスタグランジンおよびAQP2の発現を制御すると考えられているインスリン、TNFα、CREB (cAMP-responsive element binding protein)、AP-1 (activator protein 1)、NF-kBなどの遺伝子、蛋白の発現量を解析する。 ・V1aRによるV2R、AQP2の発現調節分子の同定:脱水及び酸負荷後のV1aRによるV2R, AQP2発現調節分子を調べるため、WTとKOの腎蛋白の発現を比較し解析する。 ・V1aRによる水透過性に関与する分子の同定:上記の実験によりWTとKOで発現の違いがあった腎蛋白のうち、腎集合管に発現しているものを特定する。腎集合管培養細胞に過剰発現させ、脱水時(VPに添加)、アシドーシス時(細胞外液を酸性化)にAQP2の膜移行が変化するか解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度中に発注し納入予定であった物品が遅れたため、支払いが26年度に繰り越しになった。 26年度は余裕を持って物品を発注し、助成金を使用するようにする。
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