研究課題/領域番号 |
24790226
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
林 美樹夫 関西医科大学, 医学部, 助教 (10368251)
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キーワード | 生理学 / イオンチャネル / 膵臓 |
研究概要 |
上皮細胞における重炭酸イオン輸送を担うイオンチャネルの生理機能と分子基盤を明らかにするため、膵臓由来株化細胞に存在する陰イオン輸送体の電気生理学的同定を試みた。 まず膵臓由来株化細胞(Capan-1)の単層上皮標本を作製した。そしてUssingチャンバー法を用いて、Capan-1細胞の単層上皮における経上皮膜電流を測定した。管腔側のアデノシンまたは選択的アデノシンA2B受容体作動薬のBAY60-6583は経上皮膜電流を増加させた。またアデノシン作動性電流は、選択的アデノシンA2B受容体拮抗薬のPSB603により抑制された。さらにパッチクランプ法を用いて、アデノシンA2B受容体作動薬はcAMP活性型Clチャネルを活性化することを認めた。アデノシンA2B受容体はラット膵臓導管細胞とCapan-1細胞の管腔側膜に局在することを免疫組織学的に認めた。 以上の結果は、アデノシンが管腔側膜に存在するアデノシンA2B受容体を介して膵臓導管細胞の経上皮膜イオン輸送を制御することを示唆する。また、アデノシンは炎症性疾患、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患などに広く関与することから、アデノシンA2B受容体が膵炎や膵癌などの膵臓病の進行に中心的な役割を果たす可能性がある。 今後は、Capan-1細胞における陰イオン輸送体の電気生理学的かつ分子生物学的同定を試みる。その実験に必要となるパッチクランプ法および分子生物学実験システムは既に構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
膵臓導管細胞において、アデノシンA2B受容体を介した起電性の経上皮陰イオン輸送を明らかにした。さらにパッチクランプ法を用いてアデノシン作動性陰イオン電流の測定に成功した。このイオン輸送体を電気生理学的に同定することにより、重炭酸イオンチャネルの分子生物学的同定が見込める。
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今後の研究の推進方策 |
1、パッチクランプ法を用いて、Capan-1細胞のホールセル電流を測定する。陰イオンコンダクタンスのイオン選択性および電位依存性を解析し、重炭酸イオンコンダクタンスを電気生理学的および薬理学的に同定する。 2、セルアタッチ法およびインサイドアウト法における単一チャネル電流を測定する。単一チャネルコンダクタンスのイオン選択性およびゲーティング特性を解析する。 3、Capan-1細胞およびラットまたはモルモットの膵臓導管細胞からmRNAを抽出する。ターゲットとなるイオンチャネルファミリーで共通に見られる領域をコードする遺伝子配列をプライマーとしたRT-PCR法を用いて、重炭酸イオンチャネルの分子クローニングを試みる。さらに3’ RACE法および5’ RACE法を用いて輸送体分子の全長クローニングを試みる。 4、遺伝子挿入法を用いて、培養細胞系(HEK293細胞等)に重炭酸イオンチャネルを強制発現させる。1および2と同様の実験を行い、電気生理学的性質を比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定よりも少ない実験動物を用いて効率よく実験を遂行できたため、当該研究費が生じた。 消耗品費(実験動物)に充当する。
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