研究課題/領域番号 |
24790226
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
林 美樹夫 関西医科大学, 医学部, 助教 (10368251)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生理学 / イオンチャネル / 膵臓 |
研究実績の概要 |
上皮細胞における重炭酸イオン輸送を担うイオンチャネルの生理機能と分子基盤を明らかにするため、膵臓由来株化細胞(Capan-1)に存在する陰イオン輸送体の電気生理学的同定を試みた。 グラミシジン‐パッチクランプ法を用いて、Capan-1細胞における全細胞電流を測定した。細胞外のアデノシンはCapan-1細胞の陰イオン電流を増加させ、そのKd値は10 microMだった。また、アデノシンA2B受容体作動薬のBAY 60-6583は陰イオン電流を増加させた。その電流はcAMP活性型Clチャネル抑制薬(CFTRinh-172)により抑制された。BAY 60-6583による活性化は68%の細胞で観察された。電流の逆転電位から細胞内のClイオン濃度を計算すると、51 mMだった。アデノシンA2B受容体は細胞膜裏打ちタンパク質のEzrinとラット膵臓導管細胞の管腔側膜において共局在することを免疫組織学的に認めた。 以上の結果は、管腔側膜に存在するアデノシンA2B受容体はcAMP活性型Clチャネルを制御することを示唆する。また、アデノシンは炎症性疾患、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患などに広く関与することから、アデノシンA2B受容体が膵炎や膵癌などの膵臓病の進行に中心的な役割を果たす可能性がある。 今後は、Capan-1細胞および新鮮分離膵臓導管細胞における重炭酸イオン輸送体の電気生理学的かつ分子生物学的同定を試みる。その実験に必要となるパッチクランプ法および分子生物学実験システムは既に構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
膵臓導管細胞において、アデノシン作動性陰イオン電流の測定に成功した。このイオン輸送体を電気生理学的に同定することにより、重炭酸イオンチャネルの分子生物学的同定が見込める。また、アデノシンA2B受容体と細胞膜裏打ちタンパク質のEzrinの共局在を認めた。これらタンパク質と相互作用する分子を解析することで、輸送体分子の同定が見込める。
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今後の研究の推進方策 |
1、パッチクランプ法を用いて、Capan-1細胞の全細胞電流を測定する。陰イオンコンダクタンスのイオン選択性および電位依存性を解析し、重炭酸イオンコンダクタンスを電気生理学的および薬理学的に同定する。 2、Capan-1細胞およびラットまたはモルモットの膵臓導管細胞からmRNAを抽出する。ターゲットとなるイオンチャネルファミリーで共通に見られる領域をコードする遺伝子配列をプライマーとしたRT-PCR法を用いて、重炭酸イオンチャネルの分子クローニングを試みる。さらに3’ RACE法および5’ RACE法を用いて輸送体分子の全長クローニングを試みる。 3、遺伝子挿入法を用いて、培養細胞系(HEK293細胞等)に重炭酸イオンチャネルを強制発現させる。1と同様の実験を行い、電気生理学的性質を比較検討する。 4、共免疫沈降法を用いて、アデノシンA2B受容体とEzrinの相互作用を確認する。さらに、これらタンパク質と相互作用しているタンパク質の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に1,557円を繰り越して使用する。予定よりも少ない試薬を用いて効率よく実験を遂行できたため、当該研究費が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費(試薬)に充当する。
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