研究課題/領域番号 |
24790230
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
入江 智彦 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 主任研究官 (20546551)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | イオンチャネル |
研究概要 |
脊髄小脳変性症13型を引き起こす変異型Kv3.3が小脳神経細胞に与える影響を明らかにするため、パッチクランプ法により以下の事を明らかにした。 (1)【変異型Kv3.3を発現する培養小脳プルキンエ細胞において、外向き電流(=K電流)が減少していることを見いだした】培養小脳神経細胞にレンチウイルスベクターを用いて変異型Kv3.3遺伝子を発現させて実験を行った。培養8-10日目にTTX, カドミウム存在下で電位固定法により外向き電流を記録した。コントロール群と比較して、外向き電流密度が有意に減少していた事が分かった。変異型Kv3.3は野生型Kv3.3に対してドミナントネガティブに作用する事が知られているので、変異型Kv3.3が培養プルキンエ細胞に発現する内在性Kv3.3のチャネル活性を阻害することで外向き電流の減少が生じたと考えられる。 (2)【変異型Kv3.3を発現する培養小脳プルキンエ細胞において、活動電位の延長と発火特性の変化が生じることを見いだした】外向き電流の減少がプルキンエ細胞の活動電位の発生と発火特性に与える影響を明らかにするために、電流固定下で通電刺激により活動電位を誘発した。変異型Kv3.3を発現するプルキンエ細胞では、コントロールと比較して活動電位の持続時間が延長していた。更に、持続的に発火する場合の発火頻度も減少していた。これは、変異型Kv3.3による外向き電流の減少により、活動電位の下行相が緩やかになると同時に、持続発火時の再分極が遅くなることによるNaチャネル不活性化の蓄積が原因であると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画にある実験のうち、パッチクランプ法による記録は既に実施済みである。また、この計画に含まれている細胞内CaイメージングとCaチャネル阻害剤存在下での培養実験に関しては、実験は終了しており、平成25年5月時点現在でデータを解析中である。このように研究費申請時点で計画した研究内容は順調に終了、または終了目前である。それゆえ、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)変異型Kv3.3を発現させた小脳初代培養において、プルキンエ細胞に対する興奮性シナプス入力に対する影響をパッチクランプ法を用いて測定し、このデータをこれまでの結果と合わせて論文として投稿する。これにより、初代小脳培養系を用いた脊髄小脳変性症13型の病態メカニズムに関する研究を完成させる。 (2)論文投稿後は、平成25年度の研究計画通りの実験を開始する。具体的には、培養細胞と比べて生体環境により近いin vivoにおける、変異型Kv3.3の神経細胞に対する影響を検討する。レンチウイルスベクターを用いてマウス小脳にin vivoで変異型Kv3.3遺伝子を発現させて、小脳依存的運動機能に対する影響や、小脳神経細胞の生理的機能に与える影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在パッチクランプ実験に用いている顕微鏡は購入後約20年が経過しており、機能的な制限が多くて研究に支障を来しつつある。そこで、平成25年度の研究費では最新型のパッチクランプ記録用正立顕微鏡、BX51WI(オリンパス社製, 約200万円)の購入を行い、研究が着実に進むように実験環境の整備を行いたい。
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