研究課題
互いに類似したドメイン構造を持つタンパク質p62とNbr1は、ともにタンパク質分解系オートファジーにより選択的に分解される基質としてごく最近見出されたタンパク質である。これまでに、p62の機能を遺伝子改変マウスを用いて解析してきた結果、p62は中枢神経系で摂食行動を制御する重要な役割を持っており、その欠損により個体は過食、肥満を引き起こすことを明らかとしてきた。しかし、Nbr1の生理的機能はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、Nbr1の役割について、p62との相違を明らかにし、生理機能を解明することを目的としている。昨年度までに、WT細胞,WT:Nbr1-KD細胞,p62-KO細胞,p62-KO:Nbr1-KD細胞を作成し、Nbr1のノックダウンしより、細胞の増殖速度が低下することを見い出した。今年度はそのメカニズムについて解析を加えた。まず、フローサイトメトリーによる細胞周期解析を行った。その結果、WT細胞とWT:Nbr1-KD細胞の間ではG0/G1期、S期、G2/M期の細胞分布に有意な差は認められなかった。この結果より、細胞周期の停止、遅延による増殖速度低下の可能性は低いと判断した。次にLDH活性を測定し、死細胞率を調べた。その結果、Nbr1ノックダウン2日後にWT:Nbr1-KD細胞はWT細胞に比べ死細胞率が大きく増加することが明らかとなった。この結果からWT:Nbr1-KD細胞では細胞増殖速度の低下は細胞死の増加による可能性が考えられた。さらに、増殖速度低下のメカニズムを解明するためにリン酸化p38,p38をウエスタンブロット法により検討することにした。その結果、Nbr1ノックダウンによりp38、リン酸化p38が減少することが明らかとなった。これらの結果から、WT:Nbr1-KD細胞における増殖速度の低下はリン酸化p38、p38の減少が原因の1つであることが推測された。
すべて 2013
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J Neurosci.
巻: 33 ページ: 14767-14777
10.1523/JNEUROSCI.2954-12.2013.