研究課題/領域番号 |
24790238
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
中村 孝博 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (00581985)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生体リズム / 加齢 / 神経回路 |
研究概要 |
ヒトでは、老年期になると中途覚醒や早朝覚醒など、睡眠の質の低下を感じるようになり、昼間の活動量の低下、夜間頻尿などの生物時計が駆動する生体機能の低下が認められる。最近、申請者らは、これら加齢による概日リズム機構の低下は、哺乳類の生物時計中枢である視床下部・視交叉上核(SCN)の出力系の低下が起因することを突き止めた。しかしながら、その詳しいメカニズムはわかっていない。本研究では、概日リズムの加齢による神経システムの変化に焦点を当て、加齢によるSCN機能低下の原因を分子レベルから解明することを目的として研究を開始した。 まず、SCN間の細胞ネットワークに重要な働きをする神経ペプチドであるVasoactive intestinal peptide (VIP)が加齢SCNで低下しているか否かを検討したところ、タンパク質レベルでの大きな変動は認められなかった。次に、若齢マウスと老齢マウスのSCNからそれぞれ抽出したRNAサンプルをDNAマイクロアレイにて解析したところ、既知の遺伝子の中で、発現量が十分に検出された32遺伝子が老齢SCNでその発現量が半減していた。個別の遺伝子の解析は次年度以降の計画に含まれているので計画を実行する予定である。また、既知のタンパク質であるタンパク質XがSCNのグリア細胞に強く発現し、そのタンパク質の変動に概日リズムがあることが観察された。次年度は、このタンパク質が加齢と関係するかを中心に検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属する機関の移転があったため、当初の計画よりも若干遅れている。年始から年度末にかけて、移転に作業に追われ、ほとんど計画を遂行することができなかった。移転計画は当初から知り得たことであるが、移転に対する研究者の負担が予想以上に大きかった。そのような状況下でも、我々は、DNAマイクロアレイによって、既知の遺伝子の中で、発現量が十分に検出された32遺伝子が老齢SCNでその発現量が半減していた。また、既知のタンパク質であるタンパク質XがSCNのグリア細胞を中心に多く発現している事を突き止め、概日時計機構に関係する分子であると推測している。当初の計画と比べ、遅れた部分もあるが、新しい分子の発見はこれまでの大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイ解析で得られた情報により、それぞれの遺伝子についてリアルタイムPCRを用い遺伝子発現量が加齢によって変化しているかを確認する。確認された遺伝子について、SCNでの機能を中心に掘り下げた検討に入る予定である。また、タンパク質Xについて、加齢によって増減するかどうか、そのタンパク質の欠損が概日リズムにどのような影響を与えるかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に実施できなかった実験の消耗品費、次年度の研究計画に記載されている実験の消耗品費および研究成果発表に関わる経費として使用する。
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