研究課題/領域番号 |
24790239
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
舟久保 恵美 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90548538)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気圧 / 内耳 / 痛み |
研究概要 |
【目的】低気圧接近などの気象変化によって慢性痛や片頭痛が悪化することは、経験的によく知られている。これまでの研究で、日常の気象変化で体験する程度の気圧低下によって慢性痛モデル動物の痛み行動が増強することを明らかにした。また、内耳を破壊した慢性痛モデルラットでは、気圧低下によって痛みが増強しないことがわかり、内耳が気圧検出に関係する可能性を示唆する結果が得られた。本研究では、生体内気圧検出機構について具体的な関連部位や分子機構を解明することを目的とする。とくに腎臓、膀胱上皮、内耳に多く存在し、細胞の膨張、熱刺激、機械刺激や低浸透圧で活性化される受容体TRPV4に着目する。また、これまでの研究により、ラット前庭神経核細胞および三叉神経脊髄路核細胞が気圧低下に応答することを電気生理学的に確認しているため、この結果に加え、気圧低下環境曝露による前庭神経核および三叉神経脊髄路核でのc-Fosタンパク発現の変化を組織学的に検討する。【方法】①健常ラットの脳硬膜、三叉神経節、内耳でのTRPV4発現を確認し、気圧低下によって発現が変化するかどうか調べる。②健常ラットを気圧低下環境におき、前庭神経核、三叉神経核ニューロンのc-Fosタンパク発現の変化を調べる。【結果・考察】PCRによって、TRPV4が三叉神経節、脳硬膜、脳硬膜静脈洞周辺に発現していることが確認できた。また、免疫染色によって脳硬膜血管周囲の神経にTRPV4が発現していることを組織学的に確認できた。このことは、TRPV4が血管にかかるシアストレス、伸展刺激など物理的な刺激に応じ、発痛物質の透過性亢進や内皮依存的な血管拡張・収縮に関与し、片頭痛発生機序の一役を担う可能性を示唆すると考える。前庭神経核のc-Fosタンパク発現は、気圧低下によって有意に増加した。三叉神経脊髄路核での発現については現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PCRおよび免疫染色によってラット脳硬膜、脳硬膜静脈洞周辺、三叉神経節にTRPV4が発現していることが確認できた。気圧変化による発現変化はまだ確認できていない。 気圧低下によって前庭神経核ニューロンのc-Fos発現が誘導されたことから、気圧低下は前庭神経系を賦活する刺激となりうることがわかった。 所属が変更になることで継続的な動物飼育が困難になることを予想し、今年度のTRPV4ノックアウトマウスの実験導入は控えた。
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今後の研究の推進方策 |
TRPV4ノックアウトマウスを実験に導入する予定であったが、ノックアウトマウス導入前に、気圧変化検出部位、分子機構をさらに詳細に検討する。低気圧接近により鼻閉、鼻汁分泌といった症状が増悪することも知られているため、これまでの内耳、脳硬膜、角膜に加え、鼻粘膜周辺の三叉神経領域に受容野をもつニューロンからの神経活動を気圧低下環境にて記録することを計画している。 また、低気圧接近により皮膚の痒みが悪化することも知られている。TRPV4は皮膚のバリア機能を担うタイトジャンクションの形成に関与していることも知られているため、気圧および温度、湿度を変化させたときの皮膚のTRPV4の発現、炎症物質等の変化を調べ、気圧をはじめとした環境変化に対する生体応答を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたTRPV4ノックアウトマウス購入を取りやめたため、未使用繰越額が生じた。 旅費,学会参加費 45万円 (日本創傷・オストミー・失禁管理学会(静岡県コンベンションアーツセンターグランシップ/静岡 5月),日本褥瘡学会(神戸国際展示場・神戸国際会議場・神戸ポートピアホテル/兵庫 7月),夏期セミナー研究発表(富士吉田/山梨 8月),日本生気象学会(米子市文化ホール/鳥取 11月),実験見学旅費(名古屋大学 11月)) 試薬、動物購入・飼育費 75万円 英文校閲 10万円
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