研究課題/領域番号 |
24790240
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岩田 衣世 日本医科大学, 医学部, 助教 (00582991)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 多嚢胞性卵巣症候群 / キスペプチン / 生殖 / アンドロゲン / 黄体形成ホルモン / 脳 |
研究概要 |
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵がうまくいかないことにより、卵巣に多数の卵胞が存在する疾患で、生理不順、無月経、異常なアンドロゲン分泌などがみられ、不妊症になりやすいことから女性にとって重要な問題となっている。発症原因は未だ不明だが、おそらく下垂体や卵巣に問題があると考えられてきた。申請者は、原因は脳にもあるのではないかと考え、排卵や卵胞発育に大きく関わっていると考えられているキスペプチンニューロンに注目し、キスペプチンニューロンの異常がPCOSに関与しているのではないかと推測した。本研究では、論文で報告されているPCOSモデルラットを作成し、キスペプチンの発現について検討した。排卵に関与するキスペプチンの発現には異常が見られなかったが、卵胞発育に関与するキスペプチンの発現が抑制されており、その結果、黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌も抑制されていた。キスペプチンは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌を刺激し、GnRHは下垂体からのLH分泌を誘導することが知られている。PCOSラットの下垂体においてGnRHの反応性が低下していたことから、キスペプチンを投与しても、LH分泌は回復しないことが明らかとなった。PCOSラットは、長期的に高濃度のアンドロゲンを投与し作成したモデルである。PCOS患者において高アンドロゲン血症がみられることや、肥満女性で高アンドロゲン血症になることが報告されている。今回の結果から、雌においてアンドロゲンは、卵胞発育に関わるキスペプチンを抑制することと、下垂体でのGnRHの反応性を低下させることが明らかとなった。高アンドロゲン血症の女性において、このような神経内分泌変化が起こる可能性があり、PCOS発症の原因にも関与しているのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、PCOSモデルラットを用いて、排卵や卵胞発育に関わる脳内キスペプチンニューロンの発現について解析することであった。長期アンドロゲン投与により作成したPCOSモデルラットのキスペプチン発現と、その時の黄体形成ホルモン(LH)の分泌動態を解析し、排卵に関わるキスペプチンニューロンには異常がないが、排卵を誘起するLHサージが起きないことと卵胞発育に関わるキスペプチンニューロンとLHパルスが抑制されていることが明らかとなった。また、下垂体において性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の反応性が低下していたことから、キスペプチンを投与しても、LH分泌は回復しないことが明らかとなった。以上の結果について、現在PCOSモデルラットにおけるキスペプチンの発現についての論文を作成している段階であることから、計画通りにすすんでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、高アンドロゲン血症のPCOSラットでは、卵胞発育に関わるキスペプチンとLHのパルス状分泌が抑制されていたことと、下垂体でのGnRHの反応性も低下していることが明らかとなった。以上の結果は、アンドロゲンがキスペプチンや下垂体での反応性低下を引き起こしていると考えられる。今後の方針としては、高アンドロゲン血症ラットを用いて、血中のアンドロゲンを下げる、もしくはアンドロゲン受容体の拮抗薬を投与することで、キスペプチンの発現や下垂体での反応性が回復するのか検討する予定である。 また、アンドロゲンによって下垂体でのGnRHの反応性が低下することが明らかとなったが、反応性が低下した原因について、PCOSラットを用いてGnRH受容体の発現量や免疫組織化学的手法による形態学的変化について検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの結果をまとめた外国語論文校閲費および外国語論文投稿費、学会で成果発表を行うための旅費、実験を行うための消耗品費(実験動物、実験試薬、抗体、実験器具費等)
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