研究課題
痛みにより引き起こされる不安、嫌悪、抑うつなどの不快情動は、生活の質(QOL: Quality of life)を低下させ、精神疾患・情動障害の引き金ともなるため、情動的側面をも考慮した疼痛治療が求められている。そこで本研究では、痛みによる情動変化に対する側坐核内領域特異的ドパミン神経情報伝達の役割を明らかにすることを目的とし、in vivo microdialysis法、行動薬理試験と種々の薬物の脳内局所微量投与を組み合わせることで、快・不快といった情動の両方向性に深く関与すると考えられる側坐核の、痛みの情動的側面に対する役割について詳細な解析を行う。本研究では、SDラットを用い、痛み刺激として2%酢酸腹腔内投与した際の側坐核内ドパミン遊離量の変化を、吻側-尾側方向の位置を細分化しつつ、in vivo microdialysis法により検討した。側坐核Shell領域では、吻側領域でのみ痛み刺激負荷後30分をピークとした有意なドパミン遊離量の増加が確認された。一方、Shell尾側領域では有意ではないもののドパミン遊離の減少傾向が確認された。また、条件付け場所嫌悪性試験法を用いた解析により、側坐核shell吻側領域におけるD2受容体を介した神経情報伝達を拮抗薬の局所投与により阻害することで、痛みによる負情動生起が阻害されることを見出した。一方、本領域へのD2作動薬局所投与による負情動生起は見られなかったことから、本領域のドパミン受容体の刺激のみでは不快情動を生成するには不十分であり、他の神経伝達物質や他領域を介した神経伝達も同時に必要であることが考えられる。
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