本課題は、肺組織に発現する脂肪酸受容体GPR120の生理機能を明らかとすることを目的とした課題であり、in vitro及びin vivoの両面から肺における脂肪酸受容体GPR120のメカニズム解析を試みた。これまでに我々は、マウス肺の免疫染色結果から、クララ細胞のマーカータンパク質と、GPR120タンパク質が共発現することを報告している。クララ細胞は、肺サーファクタントプロテインを分泌することから、GPR120とサーファクタント分泌に注目することとした。in vitroでの検討として、クララ細胞での発現とサーファクタント分泌については前年度に検討を行った。今年度はクララ細胞の他に肺上皮細胞におけるGPR120の発現を確認するためにヒト肺胞基底上皮腺癌細胞株A549細胞を用いて検討を行った。我々はA549細胞にもGPR120が発現していることをmRNAレベルで確認した。しかしながらA549細胞におけるサーファクタントプロテインの産生分泌について報告がないため、上皮細胞におけるGPR120の機能は別の課題とすることとした。次に、in vivoにおける検討として、GPR120KOマウスを用いて喘息モデルマウスを作成し肺胞洗浄液に含まれる、サーファクタントプロテインを検出し定量することとした。前年度に市販抗体中から選定した、肺胞洗浄液中のサーファクタントを検出可能な抗体を用いて、肺胞洗浄液を濃縮後Western blotting法により検出定量を行った。コントロール群においてはWT、KOマウス間でサーファクタントプロテインの量に優位な変化はなかったが、喘息モデル郡においては有意なサーファクタントプロテイン量の差を確認することができた。これはGPR120が肺の機能、さらに病態と関連することを示唆するものであると考えられた。
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