研究課題/領域番号 |
24790252
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
足立 直子 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 助教 (70604510)
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キーワード | パルミトイル化 / ニトロシル化 |
研究概要 |
本研究では、共にタンパク質のシステイン残基をターゲットとする翻訳後修飾であるS-パルミトイル化とS-ニトロシル化が同一タンパク質の同一システイン残基の修飾を介して相互にタンパク質の機能調節を行うことを仮定し検証を行っている。 そこで今回、タンパク質のニトロシル化修飾を起こすモデルとして、マウスのマクロファージ由来細胞株であるRAW264.7細胞にLPS/IFNgamma刺激を行い、内在的に一酸化窒素合成酵素であるiNOSの発現を誘導した細胞を用いた。NOの産生はGriess法により確認し、また、iNOS阻害薬である1400wを用いることでNOの産生を完全に阻害する条件の検討を行った。つまり、NOを多量に産生し、内在タンパク質のニトロシル化が起こっているであろう活性化マクロファージを用いて1400wの有無により同じシステイン残基をターゲットとするパルミトイルタンパク質の挙動を観察した。 まず始めに、これらの各条件下で培養したRAW264.7細胞からパルイトイル化タンパク質をAcyl-RAC法により精製しLC-MS法によりパルミトイル化タンパク質の同定を行った。結果、数種のタンパク質においてNOの産生に伴いパルミトイル化レベルの減少が確認された。これは、ニトロシル化とパルミトイル化が同一システイン残基を競合的に修飾している可能性を示唆した。また興味深いことに、これとは逆にNO産生条件下でのみ、パルミトイルレベルが大きく上昇するタンパク質も同定することに成功した。そこで、これらの各タンパク質についてニトロシル化、パルミトイル修飾を受けることを個別に確認後、修飾システイン残基の位置の同定を行い、タンパク質の機能に与える影響を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、研究の目的としていたGタンパク質共役型受容体(GPCR)のパルミトイル化・ニトロシル化翻訳後修飾における相互調節機能の解明を目指し、パルミトイル化・ニトロシル化タンパク質を精製後、質量分析にてGPCRの同定を試みたが、内在性のGPCRの発現量は非常に低く、今回の手法では翻訳後修飾を受けたGPCRを同定するに至らなかった。 そこで、[予測と異なる結果が出た場合」として申請書にも記載していたとおり、GPCR以外のタンパク質に注目し解析を行っており、両翻訳後修飾の相互機能調節の解明に努めている。また、バイオインフォマティクスを用いて、GPCRの中でもターゲットを絞り、過剰発現系において、GPCRの翻訳後修飾についての解析も行っており、興味深い成果が出始めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初はバイオインフォマティクスや質量分析を用い翻訳後修飾を受けたGPCRを網羅的に解析する予定であったが、内在性GPCRの発現量が非常に低いことから研究方針の変更を行った。 一つ目として、両翻訳後修飾を受けるタンパク質をGPCRに限定せず解析を行い、ニトロシル化によるパルミトイル化修飾の阻害の可能性を検証している。既にNO産生条件下でのみパルミトイル化修飾の挙動が変化するタンパク質を同定しており、これらのタンパク質が両翻訳後修飾によりどのような機能調節を受けているのかを検討する。 二つ目として、パルミトイル化・ニトロシル化部位を予測するソフトウエアを用いて、同一システイン残基が高い可能性で両翻訳後修飾を受けうるGPCRについて、過剰発現系のモデル細胞を用いて両翻訳後修飾の有無、修飾部位の決定、さらには、その機能解析を行っている。GPCRにおいて当初予測されていたより、多くのシステイン残基がこれらの翻訳後修飾を受けていることが分り、これらの翻訳後修飾の機能的意義の解析を行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画ではSILAC法を用いてラベルしたサンプルの質量分析を行い、網羅的にGPCRの翻訳後修飾を解析する予定であったが、内在性GPCRの発現量が非常に低く、この手法ではGPCRを同定することが不可能と判断した。そのため、SILAC法に必要であった試薬の購入やそれに伴う質量分析機器の使用料金等が大幅に減額したため、次年度に資金を持越しし、タンパク質の機能解析部分に使用することとした。 繰り越した資金は出来るだけ本研究を迅速に進めるために市販で入手可能な物は購入、合成を依頼することを計画している。特にタンパク質の機能解析にあたり、遺伝子、プライマー、ノックダウンに使用する合成siRNAや抗体の購入を行う。
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