本研究では、ベータアドレナリン受容体の内、これまで、実験的にパルミトイル化修飾が証明されていないベータ3受容体について、パルミトイル化状態と受容体の活性化、または、安定性について着目し、研究を行った。
ベータ3受容体のパルミトイル化状態を調べたところ、Gタンパク質共役型受容体の多くでパルミトイル化されているシステイン残基と相同なシステイン残基のみならず、その他に少なくとも2か所の新規パルミトイル化部位が同定された。そこで、パルミトイル化されるシステイン残基に変異を加え、パルミトイル化されない変異体を作製し、リガンド刺激後の受容体の活性化を測定した。結果、cAMPの蓄積については野生型と大きな違いはみられなかった。一方で、パルミトイル化修飾を阻害する試薬(2-BP)を細胞に添加したところ、受容体の安定性が著しく阻害された。そこで、脱パルミトイル化後の受容体の分解経路を調べた所、リソソーム阻害薬の添加により分解が抑制され、また、プロテアソーム阻害薬の添加により、ユビキチン化を受けたと思われる受容体が同定された。これらのことから、ベータ3受容体はユビキチン化後プロテアソームで分解を受けるベータ2受容体と同様の経路で分解される可能性が示された。これらの結果、ベータ3受容体の活性化状態にパルミトイル化は関与しないが、脱パルミトイル化を受けることで、細胞質膜上での受容体が分解され、脱感作を引き起こす可能性が示唆された。このメカニズムを利用することで、ベータ3受容体により調節されている脂肪細胞の分解を調節できる可能性が示唆された。
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