研究課題/領域番号 |
24790253
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森岡 徳光 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 講師 (20346505)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脊髄アストロサイト / 慢性疼痛 / TNF-α / IFN-γ / connexin43 |
研究概要 |
本研究は疼痛の慢性化に対する脊髄アストロサイトのgap junction-connexin43の機能と役割を明らかにするために、疼痛動物モデルおよび培養細胞を用いて研究を展開し、新規鎮痛薬のターゲット分子としての基盤を確立することを目的としている。平成24年度において申請者は、神経傷害性慢性疼痛モデルマウスにおいて、脊髄後角でのconnexin43発現レベルが神経傷害後1週間から3週間で著明に減少していることを見出した。さらにconnexin43に対する特異的siRNAを脊髄くも膜下腔に投与することで、connexin43発現を低下させることによっても疼痛が惹起されることが明らかとなった。これらの結果は、脊髄後角におけるconnexin43発現低下が慢性疼痛発症に寄与していることを示唆している。一方で初代培養脊髄アストロサイトを用いた検討により、疼痛惹起物質として知られているtumor necrosis factor(TNF)-α及びinterferon(IFN)-γを24、48時間処置することによりconnexin43発現ならびにgap junction機能が著明に低下することを見出した。さらに、これらの作用はc-jun N-terminal kinase(JNK)阻害薬であるSP600125を前処置することにより有意に抑制され、また両サイトカイン処置によりJNKリン酸化が増大していることから、TNF-α/IFN-γはJNK活性化を介してconnexin43発現低下を惹起していることが明らかとなった。本研究結果は慢性疼痛発症機序に脊髄アストロサイト-connexin43発現低下が重要な要因であることを先駆けて示唆するものであり、これまでに報告のない新たな創薬ターゲットを提示するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究において、慢性疼痛動物モデルを用いた検討により、慢性疼痛発症におけるgap junction-connexin43の重要性が明らかとなった。また培養脊髄アストロサイトを用いた検討により疼痛惹起物質によるconnexin43発現制御機構が一部明らかとなり、その成果がJournal of Neuroscience Research誌に掲載予定であることから、当該研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、gap junction-connexin43発現低下がどのようなメカニズムを介して慢性疼痛発症に寄与しているのかを明らかにする必要があると考えている。そこで、connexin43発現と連動して変化する疼痛関連分子(受容体、トランスポーター、酵素、サイトカインなど)を網羅的に解析することにより、その詳細を明らかにしていく予定である。また、培養脊髄アストロサイトにおけるgap junction-connexin43発現制御においても、TNF-α/IFN-γによるJNK活性化がどのようなメカニズムを介してconnexin43発現を低下させているのかを明らかにしていく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
疼痛モデルならびに初代培養細胞の作製のために、多数のマウスの確保・維持が必要となる。また本研究では、細胞の培養器材、siRNAの設計やアデノウイルスベクターの作製、real-time PCR試薬、Western blot用抗体、蛍光試薬などが必要となる。以上の実験動物や研究試薬の購入に研究費を使用する予定である。また当該研究で得られた成果を国内(日本薬理学会・日本薬学会など)・国際(北米神経科学学会)などで発表するための旅費にも使用する予定である。
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