本研究は疼痛の慢性化におけるconnexin43(Cx43)-gap junctionの役割を明らかにすべく、培養脊髄アストロサイトならびに神経因性疼痛モデルマウスを用いて検討を行った。平成24年度においては、培養脊髄アストロサイトにおいて炎症性サイトカインであるTNF並びにIFN-γがCx43発現及びgap junction機能を低下させ、この反応にはJNK活性が関与していることを明らかとした。平成25年度においては、同様に培養脊髄アストロサイトを用いて、炎症性サイトカインによるCx43発現低下メカニズムの詳細な検討を行った。炎症性サイトカインによるCx43発現低下はCx43分解が促進している可能性が予想されたことから、タンパク合成阻害薬であるcycloheximide存在下にて、炎症性サイトカインを処置するとCx43発現量が著明に減少した。この結果は、炎症性サイトカインによるCx43発現低下作用には、タンパク合成抑制系ではなく分解促進系が関与していることが示唆された。そこで、これらの反応に対するproteasome系の関与を検討したところ、炎症性サイトカイン処置によりproteasome活性が上昇していた。さらに炎症性サイトカイン処置によるCx43発現低下作用は、proteasome阻害薬であるMG-132により有意に拮抗された。以上の知見は、脊髄アストロサイトにおいて炎症性サイトカインは、JNK-proteasome系を介してCx43発現を制御していることを示唆している。さらに神経因性疼痛モデルマウスの脊髄後角においてCx43発現が著明に低下していることが明らかとなり、この反応が疼痛惹起に寄与している可能性が予想される。一方、三環系抗うつ薬であるamitriptylineがアストロサイトにおけるCx43発現に影響を及ぼすことも明らかとした。
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