研究概要 |
血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)は、脳毛細血管内皮細胞、ペリサイトおよびアストロサイトの相互作用によって機能が維持されており、その機能不全は神経細胞障害の惹起と憎悪に関与していると考えられる。病態時において、BBB の機能維持(BBB保護)は、脳保護(神経細胞保護)に繋がると考えられる。 本研究では、この3種類のBBBB構成細胞を用いて共培養モデルを作製し、虚血再潅流または高血糖(グルコース負荷)、虚血再潅流と高血糖により増加する後期糖化生成物(AGE)の共負荷をかけ、血液脳関門機のバリアー機能について検討した。虚血再還流障害モデルでは、内皮細胞の単層培養系に比べ共培養モデルの方が、BBBのバリアー機能低下が顕著であった。ペリサイトおよびアストロサイト由来の液性因子が、虚血再還流負荷による内皮細胞障害を増悪させているものと考えられた。高血糖の負荷モデルでは、高血糖(55mM)により、BBBのバリアー機能低下が観察された。以上のことより、BBBの虚血再潅流障害モデルと高血糖障害モデルの作製に成功したと考えられる。更に、虚血再潅流と高血糖(後期糖化生成物、AGE)負荷では、軽度の虚血により、バリアー機能の低下が観察された。高血糖が虚血障害を増大させることが知られており、本研究結果はそれを支持するものである。また、虚血と高血糖の共負荷によりTGF-βの産生増大が観察され、TGF-β受容体の拮抗薬で障害が軽減された。TGF-βはBBBを構成する3種類の細胞全てに、影響を与えるため、虚血時における重要なクロストーク因子であることが示唆される。我々は抗血小板薬のシロスタゾールが虚血と高血糖の共負荷により増大するTGF-β産生を低下させること、またTGF-β負荷によるバリアー機能障害を軽減することを発見し、BBB保護薬としての可能性を示した。
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