研究課題/領域番号 |
24790261
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
森 麻美 北里大学, 薬学部, 助教 (80453504)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬理学 / 微小循環 / 緑内障 / 糖尿病 / 血管生物学 / 網膜 / 内皮由来過分極因子 / Beta アドレナリン受容体 |
研究概要 |
本年度は健常ラットを用いて正常時網膜循環調節機構に関して,in vivo 網膜血管機能実験を行った. (1) 網膜循環調節機構に関与する内皮由来過分極因子 (EDHF) の同定:高コンダクタンス Ca2+ 活性化 K+ (BKCa) チャネルを活性化させる EDHF 候補のエポキシエイコサトリエン酸 (EETs),C 型ナトリウム利尿ペプチド (CNP),過酸化水素 (H2O2) のうち,EETs について検討した.EETs 阻害薬 [17-ODYA, 14,15-EE5(Z)E] の硝子体内投与により,内皮依存性血管拡張薬 [acethylcholine (ACh)] による網膜血管拡張反応は有意に減弱した.このことから,ACh による網膜血管拡張反応は,EETs の放出を介していることが示唆された. (2) Beta2-アドレナリン受容体 (AR) を介した網膜血管拡張機序の解明: Beta2-, beta3-AR を介した網膜血管拡張機序の相違の解明のうち,beta2-AR 刺激を介した網膜血管拡張機序について検討した.beta2-AR 刺激薬 [salbutamol] による網膜血管拡張反応は,BKCa チャネル遮断薬 [iberiotoxin] の硝子体内投与により有意に減弱した.一方,beta2-AR 以外の AC-cAMP 経路を介する薬物として,beta3-AR 刺激薬 [CL316243],PGI2 及び AC 活性化薬 [forskolin] を用いて同様に検討したが,これら薬物による網膜血管拡張反応は BKCa チャネル遮断薬による影響を受けなかった.以上の結果から,beta2-AR 受容体刺激は BKCa チャネルを活性化させ,網膜血管を拡張させることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成24年度の研究実施計画に従い,予定通りに検討し,一定の成果が得られている.得られた結果の正当性を明らかにする実験を現在検討中であるが,こちらも予想していた傾向の結果が得られつつある.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,正常時網膜循環調節機構の解明を行うと共に,糖尿病及び緑内障病態時の網膜循環障害機序を解明するため,in vivo 及び in vitro 実験を行う. (1) 網膜循環調節機構に関与する EDHF の同定:in vivo による検討を引き続き行う. (2) Beta2-AR を介した網膜血管拡張機序の解明:in vivo による検討を引き続き行う. (3) 糖尿病モデルラットにおける網膜循環障害機序の解明:本検討によって明らかとなった EDHF を糖尿病モデルラットに投与し,網膜血管拡張反応が障害されるか否かを検討する.また,得られた結果を分子レベルで裏付けるための in vitro 実験も適宜行う. (4) 緑内障モデルラットにおける網膜循環障害機序の解明:緑内障モデル動物として N-methyl-D-aspartic acid (NMDA) 硝子体内投与ラットを用いる.EDHF を中心とした薬物による網膜血管拡張反応が減弱しているか否かを検討すると共に,in vitro 実験も行う. (5) 糖尿病及び緑内障モデルラットにおける網膜循環障害の予防・治療実験: EDHF の候補因子の発現が糖尿病及び緑内障モデルで減少している場合は,候補因子の分解抑制酵素や増強薬などを病態発症以前から投与し,病態発症 2 週間後に ACh による網膜血管拡張反応の減弱が改善されるか否かについて,in vivo 実験システムを用いて検討する.また,糖尿病モデルにおいては,2-AR 作用機序の障害を保護するような薬物投与による効果についても検討する.さらに,網膜神経を形態学的に評価し,糖尿病や緑内障モデルラットで観察される網膜神経細胞の脱落や網膜神経層厚の減少に対する候補薬物の影響についても検討する.また,病態発症後の候補薬物投与による治療効果についても同様に検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き行う正常時網膜循環調節機構の解明に加え,糖尿病及び緑内障病態時の網膜循環障害機序を解明するために in vivo 及び in vitro 実験を行う.予算はこれら検討を実施するための実験動物,実験試薬,抗体などの消耗品に主に使用する予定である.また,研究成果を学会や学術誌にて発表するためにも用いる予定である.
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