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2013 年度 実施状況報告書

網膜循環障害に関与する因子の同定と網膜循環改善薬の探索

研究課題

研究課題/領域番号 24790261
研究機関北里大学

研究代表者

森 麻美  北里大学, 薬学部, 助教 (80453504)

キーワード薬理学 / 微小循環 / 緑内障 / 闘病病 / 血管生物学 / 網膜 / 内皮由来過分極因子 / βアドレナリン受容体
研究概要

本年度は健常ラットを用いて正常時網膜循環調節機構に関して,in vivo 網膜血管機能実験を行った.さらに,糖尿病モデルラットを用い,同モデルの網膜血管に増加する因子の同定を行った.
(1) 網膜循環調節機構に関与する内皮由来過分極因子 (EDHF) の同定: EDHF による網膜血管の拡張反応に,他の血管床で報告されているギャップジャンクションが関与しているか否かを明らかにするために,ギャップジャンクション阻害薬を用いて検討した.ギャップジャンクション阻害薬である[18β-glycyrrhetinic acid] 及び [carbenoxolone] の硝子体内投与により,内皮依存性血管拡張薬 [acethylcholine (ACh)] による網膜血管拡張反応は有意に減弱した.一方,[一酸化窒素 (NO)] による網膜血管拡張反応は,ギャップジャンクション阻害薬による影響を受けなかった.これらのことから,ACh による網膜血管拡張反応にはギャップジャンクションの関与が示唆された.
(2) 糖尿病モデルラットの網膜血管障害に関与する因子の同定: 糖尿病時には,酸化ストレスの亢進が種々の血管障害に関与することに着目し,糖尿病モデルラットの眼球の切片を作製し,酸化ストレスマーカーを用いて免疫染色を行った.その結果,糖尿病モデルラットの網膜血管,特に網膜細動脈と,網膜神経組織に過酸化脂質である 4-hydroxy-2-nonenal の発現が著しく増加していた.これまでの研究から,糖尿病モデルラットの ACh 及び β2 受容体刺激薬による網膜細動静脈拡張反応の減弱は,網膜細動脈にしか生じないことが明らかになっている.以上の結果を総合すると,糖尿病モデルラットでは酸化ストレス増大に伴う過酸化脂質の蓄積が,網膜細動脈の機能障害に関与している可能性が考えられた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書に記載した平成25年度の研究実施計画に従い,予定通りに検討し,一定の成果が得られている.今回得られた結果の正当性を明らかにする実験を現在検討中である.今後はこれら検討を進めるとともに,病態モデル動物を用いた検討を重点的に進めていく予定である.

今後の研究の推進方策

引き続き,正常時網膜循環調節機構の解明を行うと共に,糖尿病及び緑内障病態時の網膜循環障害機序を解明するため,in vivo 及び in vitro 実験を行う.
(1) 網膜循環調節機構に関与する EDHF の同定:in vivo による検討を引き続き行う.(2) Beta2-AR を介した網膜血管拡張機序の解明:in vivo による検討を引き続き行う.(3) 網膜血管拡張機能障害に関与する因子の同定:過酸化脂質の蓄積による網膜細動脈拡張機能障害の関与を明らかにするために,in vivo により詳細に検討する.(4) 糖尿病モデルラットにおける網膜循環障害機序の解明:本検討によって明らかとなった EDHF を糖尿病モデルラットに投与し,網膜血管拡張反応が障害されるか否かを検討する.また,得られた結果を分子レベルで裏付けるための in vitro 実験も適宜行う.(5) 緑内障モデルラットにおける網膜循環障害機序の解明:緑内障モデル動物として N-methyl-D-aspartic acid (NMDA) 硝子体内投与ラットを用い (4) と同様の検討を行う. (6) 糖尿病及び緑内障モデルラットにおける網膜循環障害の予防・治療実験: EDHF の候補因子の発現が糖尿病及び緑内障モデルで減少している場合は,候補因子の分解抑制酵素や増強薬などを病態発症以前から投与し,ACh による網膜血管拡張反応の減弱が改善されるか否かについて,in vivo 実験システムを用いて検討する.また,糖尿病モデルにおいては,β2-AR 作用機序の障害を保護するような薬物投与による効果についても検討する.さらに,網膜神経を形態学的に評価し,糖尿病や緑内障モデルラットで観察される網膜神経傷害に対する候補薬物の影響についても検討する.また,病態発症後の候補薬物投与による治療効果についても同様に検討する.

次年度の研究費の使用計画

研究計画に従って実験を行い,進めていたが,必要な試薬を利用するには不十分な金額しか残らなかったため.
研究計画通り,in vivo 及び in vitro 実験を実施し,全ての予算を使う予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Elucidation of dysfunctional mechanisms of retinal circulation in the rat models of glaucoma and exploration of novel therapeutic drugs.2013

    • 著者名/発表者名
      Mori A, Nakahara T, Kurauchi Y, Sakamoto K, Ishii K.
    • 雑誌名

      Yakugaku Zasshi. 2013 Dec 133(12) 13431-1350

      巻: 133 ページ: 1343-1350

    • DOI

      10.1248/yakushi.13-00228-2

  • [学会発表] NO は電位依存性カリウムチャネルを介してラット網膜血管を拡張させる2014

    • 著者名/発表者名
      森 麻美,滑川 諒,坂本 謙司,中原 努,石井 邦雄
    • 学会等名
      日本薬学会第 134 年会
    • 発表場所
      熊本県熊本市(熊本市総合体育館)
    • 年月日
      20140328-20140330
  • [学会発表] Mechanisms underlying dysfunction of retinal blood vessels in diabetes rats2014

    • 著者名/発表者名
      Asami Mori, Kenji Sakamoto, Tsutomu Nakahara, Kunio Ishii
    • 学会等名
      第 87 回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      宮城県仙台市(仙台国際センター)
    • 年月日
      20140319-20140321
  • [学会発表] Probucol ameliorates dydfunction of retinal circulation in diabetes rats2014

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Higashi, Asami Mori, Kenji Sakamoto, Tsutomu Nakahara, Kunio Ishii
    • 学会等名
      第 87 回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      宮城県仙台市(仙台国際センター)
    • 年月日
      20140319-20140321
  • [学会発表] NO による網膜血管拡張反応における PGI2 の役割2013

    • 著者名/発表者名
      滑川 諒,森 麻美,坂本 謙司,中原 努,石井 邦雄
    • 学会等名
      第 128 回日本薬理学会関東部会
    • 発表場所
      東京都新宿区(早稲田大学国際会議場)
    • 年月日
      20130714-20130714

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公開日: 2015-05-28  

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