研究課題/領域番号 |
24790263
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
土屋 幸弘 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (30455406)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 硫化水素関連酵素 / リン酸化修飾 |
研究概要 |
本研究は、近年多いに注目を浴びている硫化水素およびその関連分子に関する研究である。硫化水素関連酵素としてはシスタチオニン β-シンターゼ(CBS)、シスタチオニン γ-リアーゼ(CSE)、および3-メルカプトピルビン酸イオウ転移酵素(3-MST)が報告されている。 硫化水素の作用に関する研究は数多く行われているが、その産生機構や硫化水素関連酵素に着目した研究は少ないのが現状である。硫化水素についてはコントラバーシャルな点が多く、その解明の為にも本研究は非常に重要な位置を占めるものである。本研究では硫化水素関連酵素の翻訳後修飾、特にリン酸化修飾に着目し研究を実施している。 平成24年度は硫化水素関連酵素のリン酸化修飾の可能性について研究を行った。カルシウム・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)、プロテインキナーゼA(PKA)、プロテインキナーゼC(PKC)などのキナーゼを用い硫化水素関連酵素のリン酸化修飾を試みたところ、CBSのみがリン酸化修飾される事が分かった。一方CSEおよび3-MSTはどのキナーゼによってもリン酸化修飾されなかった。 次に、リン酸化修飾が認められたCBSについてそのリン酸化修飾部位の同定を試みた。CBSリン酸化修飾について分子量論学的解析を行ったところ、CBS1分子あたり複数箇所のリン酸化修飾が起こることを明らかにした。加えて質量分析および点変異導入法を用いた解析より、CBS中の複数箇所のリン酸化修飾部位の同定に成功した。これはCBSがリン酸化修飾により制御されている可能性を示す初めての知見であり、本研究の今後の進展の基盤となる結果である。その他のキナーゼによるCBSリン酸化修飾についても同様の方法で解析を進めており、複数箇所でリン酸化修飾が起こることを明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では全体の計画をステージ1からステージ3の3つに分類した。すなわち、ステージ1「硫化水素関連酵素はどのようなキナーゼによりリン酸化されるのか?」、ステージ2「硫化水素関連酵素のリン酸化部位は?」、ステージ3「硫化水素関連酵素のリン酸化の意義は?」の3つである。平成24年度はステージ1およびステージ2の実施を計画していた。 平成24年度の研究により、硫化水素関連酵素CBSがいくつかのキナーゼによりリン酸化修飾されることを明らかにした。またCBSリン酸化修飾はCBS1分子あたり複数箇所で起こることを明らかにし、またそのリン酸化修飾部位の同定にも成功した。 以上のことより、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、ステージ2「硫化水素関連酵素のリン酸化部位は?」の継続実施から、ステージ3「硫化水素関連酵素のリン酸化の意義は?」の実施に向けて研究を遂行する。 ステージ2については平成24年度に明らかにしたCBSリン酸化修飾に加え、その他のキナーゼによるCBSリン酸化修飾の詳細な解明を行う予定である。すなわち、その他のキナーゼによるCBSリン酸化修飾部位の同定である。 ステージ3については、特に現在明らかとなっているCBSリン酸化修飾について先行して実施する。すなわちCBSリン酸化修飾の意義の解明を行う。申請者はこれまでCBS活性の検出について、蛍光プローブを用いる方法、ラジオアイソトープを用いる方法の2つの実験系を確立しており、CBSリン酸化修飾の有無による活性の変化を検出する予定である。また、これまで行ってきたin vitroの結果に加えて、細胞内でのCBSリン酸化修飾の検出についても不可欠であると考えている。これは、リン酸化タンパク質補足分子を用いた解析で行う予定である。リン酸化修飾によるCBSの局在の変化などについても想定している。 CBSリン酸化部位特異的抗体の作成については、CBSリン酸化修飾が複数箇所で起こることから、このままの形では実施は難しいものと思われる。しかし、申請者はCBSリン酸化修飾部位には優位性が存在する知見を得ており、より優先してリン酸化修飾される部位、もしくはCBS活性等により大きく影響するリン酸化修飾部位のリン酸化部位特異的抗体の作成を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するにあたり必要となる施設・機器(蛍光顕微鏡、DNAシーケンサー、液体シンチレーションカウンター、マイクロプレートリーダー等)は、当大学および申請者が所属する研究室に整備されている。従って、平成24年度同様、平成25年度も主に試薬・消耗品の購入に研究費を使用したいと考えている。加えて、研究計画通り研究を遂行できた場合、平成25年度はリン酸化部位特異的抗体の作成を考えている。 また、研究成果の報告の為の学会参加費と論文投稿費として研究費を使用したいと考えている。 適切な使用はもちろんのこと、研究費の節約に取り組みつつ、効率的な使用を心がける所存である。 なお、計画的に平成24年度の研究費を使用したが、25,591円の残高が生じた。これは年度末に購入予定であった試薬の国内在庫がなかったことにより発生したものである。したがって、平成24年度の残高と合わせ平成25年度の研究費を使用する。これも試薬・消耗品の購入にあてる予定である。
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