研究課題/領域番号 |
24790264
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
名和 幹朗 東京医科大学, 医学部, 助教 (10398620)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / BTBD10 |
研究概要 |
本研究は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者脊髄における神経細胞死抑制分子BTBD10の発現低下機構解明を目的としている。本年度はBTBD10遺伝子欠損マウスの作製を行い、現在はこのマウスの遺伝子背景を一致させるためC57BL/6Jマウスにバッククロスを行っている。また、BTBD10トランスジェニックマウスの作製も行い、複数のファウンダーを得た。現在はファウンダーマウスとC57BL/6Jマウスとを交配中である。 我々はこれまでにALS原因遺伝子の1つであるFused in sarcoma (FUS)がBTBD10の発現量をmRNAレベルで低下させる事を明らかとした。本研究では、FUSによるBTBD10発現量低下と運動神経細胞死との関連性を明らかとすべく、ALS関連FUS変異体あるいは野生型FUSを発現するFUSトランスジェニック線虫を作製した。また、ALS関連TDP-43変異体あるいは野生型TDP-43を発現するTDP-43トランスジェニック線虫の作製も同時に行った。作製中のALS関連変異体過剰発現線虫は、導入遺伝子のコピー数制御が可能であり、現在は低コピーから高コピーまで複数ラインの樹立を行っている。 さらに本年度は培養細胞にプロテアソームインヒビターやタンパク合成阻害剤を添加し、BTBD10の分解機序を検討した。その結果、内在性BTBD10発現量はタンパク質合成阻害剤添加1時間後には半減するが、プロテアーゼインヒビターを培地中に同時に添加する事によってBTBD10発現量低下は完全ではないが抑制される事を明らかとした。この事からBTBD10の分解の一部はユビキチンプロテアソームシステムにより行われている事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標はBTBD10トランスジェニックマウス並びにBTBD10ノックアウトマウスの作製と、BTBD10発現量調節機構の解析であった。 BTBD10トランスジェニックマウス作製に関してはファウンダーマウスを得て、現在C57BL/6Jマウスと交配中であり、平成25年度はその表現型解析並びにALSモデルマウスとの交配が可能となり、おおむね順調に進展している。BTBD10ノックアウトマウスに関してもtransgene陽性の産仔を得た後、遺伝子背景を一致させるためバッククロスを繰り返しておりこのまま順調に進展すれば、25年度中にはバッククロスを完了し、Cre-recombinaseトランスジェニックマウスと交配した後、表現型解析を行う予定である。 BTBD10タンパク質分解機構解析は、ユビキチンプロテアソーム系での分解を受ける可能性を示唆する結果を得たが、他のタンパク質分解経路が関与するか否かに関しては不明なままであり、若干進展速度が遅いため、25年度は進展速度を上げ、より詳細にBTBD10タンパク質分解経路の解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は24年度に作製したBTBD10トランスジェニックマウスとALSモデルマウスである変異SOD1トランスジェニックマウスあるいは、TDP-43トランスジェニックマウスとを交配し、ALSモデルマウスの症状発症時期、進行速度を遅らせるか否かを、ロータロッドテスト、握力テスト、フットプリントテスト、生存期間などにより評価する予定である。現在作製中のBTBD10ノックアウトマウスはCre-loxPシステムによるコンディショナルノックアウトが可能であるので、Cre recombinaseを全身性に発現するマウスや、運動神経細胞、アストロサイト、マイクログリアのみで発現するマウスと交配し表現型を解析する予定である。また、BTBD10ノックアウトマウスとALSモデルマウスを交配し、ALS症状が悪化するか検討する予定である。 BTBD10タンパク質発現調節機構に関しては、ユビキチンプロテアソーム系以外のタンパク質によりBTBD10タンパク質が分解されるか否か検討する。また、家族性ALS原因遺伝子はRNAプロセシングに係わる分子が多く、その1つであるFUSがBTBD10のmRNAレベルを低下させる事を我々はこれまでに明らかとしている。そこで次の段階として、FUS以外の家族性ALS原因遺伝子のうち、RNAプロセシングに関与するTDP-43、Senataxin、AngiogeninによりBTBD10の発現低下が観察されるか検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は当初の研究計画をほぼ予定通りに遂行した。研究遂行にあたり必要最低限の消耗品を購入した結果、細胞培養に必要な試薬類が予定より若干少なく済んだため、交付された研究費のうち35705円を残して年度を終えた。 平成25年度は、次年度使用額と請求する研究費を合わせ、平成24年度同様予定通り研究を遂行する予定である。
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