研究概要 |
新規血管内皮由来収縮因子であるuridine adenosine tetraphosphate (Up4A)に関して、非病態下における血管反応性に関しては、幾つか報告されているが、病態下における報告、特に糖尿病時における検討はこれまで全く無かった。そこで、本プロジェクトにおいて、糖尿病性血管機能障害における、Up4Aの生理的意義を明らかにすることを目的として研究を行った。 2型糖尿病を長期的に罹患した病態モデルであるGoto-Kakizaki rat (GKラット)と対照のWistarラットから、動脈を摘出して反応性の検討を行った。Up4Aによる収縮反応は、Wistar群と比較して、GK群において、腎動脈で増大、大腿動脈で減弱、頸動脈で変化無しという、動脈部位特異性を見出した。さらに、腎動脈における増大メカニズムを検討したところ、Up4Aの収縮反応が、cyclooxygenase阻害薬や、P2受容体拮抗薬、トロンボキサン(TP)受容体拮抗薬で抑制され、内皮除去やNO合成酵素阻害薬では、Wistar群で増強が認められた。GK群の腎動脈において、COX-1, -2発現が増大していた。Up4A刺激によるトロンボキサンA2産生は両群で変化が認められなかったが、TP受容体作動薬による収縮反応では、GK群で感受性増大が認められた。また、GK群において、内皮依存性弛緩反応の減弱が認められたが、phenylephrineやKClによる収縮反応はWistar群と同程度であった。これらのことから、2型糖尿病モデルラットGKラット腎動脈におけるUp4Aによる収縮反応増大は、P2受容体/COX/トロンボキサン産生・受容体活性化の経路の異常が大きく関与することが明らかとなった。また、内皮機能障害もこのUp4Aの収縮異常に一部関与している可能性が示唆された。これらの結果から、糖尿病時におけるUp4A、トロンボキサンシグナルの是正が血管機能障害の発症進展の阻止に有効である可能性が示唆された。
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