平成24年度の研究実績で我々は、一過性脳虚血モデルラットにおいて神経細胞死が顕著な時期にはシクロオキシゲナーゼ(COX)-1を発現するミクログリアが梗塞巣に多く存在していることを明らかにし、報告している。そこで、今年度は①COX-1とCOX-2それぞれの阻害による脳虚血障害への影響 ②ミクログリア細胞におけるプロスタグランジン(PG)合成とCOX-1との関係 について検討することで、虚血障害時におけるCOX-1の機能について考察することとした。 COX-1遺伝子欠損マウスを用いて一過性脳虚血モデルを作成し、その障害の変化について観察したところ、野生型マウスと比べてCOX-1遺伝子欠損マウスでは障害が顕著に増大されることが明らかとなった。一方、COX-2遺伝子欠損マウスにおいては野生型マウスと比べた大きな変化は認められなかった。 次に、ミクログリア細胞におけるPG合成について検討するため、一過性脳虚血モデルラット脳におけるPG合成酵素の発現について検討した。その結果、COX-1を発現するミクログリアにおいてはPGD合成酵素が共発現しており、PGE合成酵素は発現していないことがわかった。これまでにPGD2が神経保護作用を示すとの報告もあることから、本研究の結果、脳虚血障害時に神経細胞死に関連して発現するCOX-1は、神経保護的な役割を担うミクログリアの活性化に関与しているのではないかと考えられた。
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