研究課題/領域番号 |
24790271
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
落合 恭子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10455785)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
本研究は、細胞分化における経時的な転写因子発現ネットワークを解析を目的とする。B細胞分化では抗体の多様性を高めるために様々な分化段階で抗体遺伝子組み換えが生じる。そこで本研究では、代表者が既に明らかにしたFoxo1遺伝子発現ネットワークに加え(Ochiai K. Nature Immunology 2012)、Foxo1下流因子である転写抑制因子Bach2により形成される遺伝子発現ネットワークを統合解析することにより、時経軸を加えた三次元的な動的遺伝子発現ネットワークの構築を試みる。 現在までの研究では、一転写因子によって制御される遺伝子発現ネットワークについて着目されてきた。近年、これに加えDNA結合配列依存的に機能する複数の転写因子による協調的遺伝子発現ネットワークの構築が試みられている。こうした研究はいわば、平面的な横のつながりを拡大したネットワーク構築と言える。一方で本研究では、時経軸を加えた三次元的なネットワークの構築を提案する。そのためにまず、代表者はFoxo1転写因子によって制御される遺伝子発現ネットワークには転写因子Bach2が含まれることを示した。次段階として、遺伝子発現ネットワークに時経軸を反映させるため、転写因子Bach2標的遺伝子の網羅的解析を行う必要がある。そこで研究計画に従い、Bach2標的遺伝子を網羅的に解析するためのChIP-sequenceを行うことを最優先事項とし、実験を進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の研究実施計画では、内在性Bach2を標的としたChIP-sequenceまでを終了する予定であった。ChIP-sequenceにより転写因子結合データを得るためには、効率よく転写因子を免疫沈降することのできる抗体が必要である。そのために、まず入手可能な多数の抗Bach2抗体によるChIPアッセイの検討を行った。しかし、内在性Bach2のChIPを行うに適した抗体は得ることができなかった。そこで解決方法として、タグ付Bach2を過剰発現させ抗タグ抗体を用いたChIPアッセイを行うこととした。 そのために、(1) タグ付Bach2発現レトロウイルスベクターの構築、(2) 同ベクターを使用細胞へ感染させることによるタグ付Bach2発現の確認、(3) 同ベクター感染細胞およびコントロール細胞を用いたChIPアッセイ、を順次行った。その結果、タグ付Bach2発現細胞におけるBach2結合領域DNAの特異的濃縮が認められた。現在、同実験系を用いてChIP-sequence解析へ進めるために、(4) ChIPアッセイによる標的領域への特異的Bach2結合効率能の最至適条件検討、を行っており、終了次第、実験計画を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
Bach2 ChIP-sequenceの解析の最終最至適条件を検討する間に、プレB細胞株における機能的標的遺伝子をスクリーニングの準備を行う。具体的には、① Bach2過剰発現細胞、② Bach2遺伝子ノックダウン細胞における遺伝子発現をマイクロアレイを用いて解析する。この解析により、プレB細胞株におけるBach2遺伝子の機能の概略を掴む。追ってBach2 ChIP-sequenceを行うことにより、マイクロアレイでスクリーニグされた遺伝子と照らし合わせ、プレB細胞株における直接標的遺伝子を同定する。 次に、Bach2とその標的遺伝子を明らかにし、Bach2遺伝子発現ネットワークを構築する。そして、Bach2遺伝子発現を制御するFoxo転写因子による遺伝子発現ネットワークと照らし合わせ、さらにFoxoからBach2遺伝子制御という時間軸を入れた三次元的ネットワークへと変換する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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