研究概要 |
ヒトiPS細胞に対してIFNγで刺激を行い、HLAのわずかな発現上昇が認められることを確認した。しかし、その上昇幅は線維芽細胞に対し10分の1程度であった。申請者が利用していた培養系ではマウスの胎仔線維芽細胞に由来するフィーダー細胞が混ざっており、iPS細胞そのものの反応を明瞭に捕えることが困難であった。そこで線維芽細胞とiPS細胞の比較を厳密に行うために、市販されている無フィーダー培養系の試薬の利用を検討した。ところがiPS細胞の継代を繰り返してみると、iPS細胞の形態が変形しディッシュから剥離していき、安定したiPS細胞の培養と実験系の構築は困難であった。 一方で、申請者はヒト末梢血より効率よくiPS細胞を作製する方法を開発し報告した(Stem Cells, 31, 458-466, 2013)。この方法を発展させ、カニクイザルiPS細胞の樹立に挑戦し、これに成功した。そこで京都大学iPS細胞研究所の高橋淳先生と共同研究を行い、樹立したサルiPS細胞からドパミン産生神経細胞を作製し、カニクイザル脳内への自家および他家移植を実施した。その結果、他家移植の場合では免疫反応が認められるものの、自家移植ではほとんど免疫反応が見られないことが明らかとなった。また、自家移植の場合は、より多くの移植細胞の生着が確認された。同様の実験系を他の分化細胞や移植法で用いることで、ヒトの移植時における免疫原生の有無や程度を類推することが可能になると期待している。
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